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■ 研究員ブログ113 ■ 幸運の雄鶏ガロとサンティアゴ・デ・コンポステーラ

新年を迎えたと思ったら、もうすぐ雨水ですね。
雪が融け冷たく澄んだ水となって流れ出す季節です。
これまでマンションの影に隠れていた
通りすがりのお地蔵さまの顔にも朝陽が当たるようになり、
車窓からは美しく花開いた紅梅が見えます。
もう春はすぐそこのようです。

先日、教王護国寺(東寺)のことを調べていたら、
今年は酉年ということで、
酉年の守護本尊である不動明王をまつる教王護国寺(東寺)が
注目を集めていました。

僕は毎年の年賀状に猫の絵柄を版画で彫っているので
僕にとってはいつも猫年なのですが、
今年の干支では酉でしたね。

鳥というと思い出すのが、
友人がポルトガルのお土産に買ってきてくれた
「ガロ」と呼ばれる雄鶏の置物です。
とぼけた表情と色合いが好きで、
何度か引越しをした今も本棚に置いてあります。

この「ガロ(ポルトガル語で雄鶏)」は、
世界遺産になっているサンティアゴ・デ・コンポステーラへの巡礼と関係しています。

昔、ポルトガルからサンティアゴ・デ・コンポステーラへと向かう道を
ひとりの青年が巡礼の旅をしていました。
その道中のバルセロスという小さな街で休んでいる時、
街では銀貨が盗まれるという事件が起こりました。
街の人々は、銀貨を盗むなんてよそ者に違いないと、
ひとりで宿に泊まっていた見知らぬ青年に疑いをかけます。

青年は必死に無実を訴えますが、誰もそれを信じず、
とうとう絞首刑が言い渡されてしまいました。
青年はそれでも無実を訴え続け、
最後には広場で丸焼きにされていた雄鶏を指差し、
「私の無実を証明するために聖母マリアが奇蹟を起こし、
丸焼きの雄鶏が鳴くでしょう。」と言いました。

すると絞首刑が執行されるまさにその時、
丸焼きの雄鶏が立ち上がって「コケコッコー」と鳴いたのです。
人々は聖母マリアが青年の無実を証明していると信じ、
青年は無事にサンティアゴ・デ・コンポステーラを巡礼することができました。

青年は、サンティアゴ・デ・コンポステーラの巡礼からの帰り道、
再びバルセロスに立ち寄ると、
聖母マリアとサンティアゴ(聖ヤコブ)に感謝して、
十字架の石碑を築きました。
バルセロスには今もその石碑が残っています。

この伝説により、幸運のお守りの「ガロ」が、
ポルトガルの人々の間に広がっていきました。

サンティアゴ・デ・コンポステーラは、
聖ヤコブの遺骸が発見されたことでキリスト教の大巡礼地のひとつとなりました。
発見の地に築かれたのがサンティアゴ・デ・コンポステーラ大聖堂です。
また、遺骸が発見された時がちょうど、イスラム教徒から土地を奪い返す
レコンキスタの最中であったため、
聖ヤコブはスペインの守護聖人になっています。

イベリア半島の人々にとって聖ヤコブはとても大切な聖人です。
そのため、聖ヤコブにまつわる伝説がいろいろと残されています。
その中のひとつがバルセロスの雄鶏ガロの伝説です。

今回のお話は世界遺産とは直接関係ありませんが、
世界遺産となっている場所が、
その地域の文化に大きく影響を与えているエピソードだなと思いました。
ガロの置物が「丸焼きにされた姿」じゃなくてよかったとも思いましたが。