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■ 研究員ブログ122 ■ 2017年の第41回世界遺産委員会が始まりました。

昨日から第41回世界遺産委員会がポーランドのクラクフで始まりました。
昨日は世界遺産ビューローの会議やオリエンテーション、オープニング・セレモニーなどがあり、
今日からいよいよ予算や作業指針などについての審議が始まります。

先日の「研究員ブログ119」の内容に追記したのですが、
ドイツから登録範囲の拡大として申請されていた
『アイスレーベンとヴィッテンベルクのルター記念建造物群』が取り下げられ、
もう一件別の遺産も取り下げられたようなので
(どの遺産か確認できていませんが、自然遺産のどれかのようです。)、
審議件数は33件になっています。
『アイスレーベンとヴィッテンベルクのルター記念建造物群』については
イコモスから範囲拡大が認められていなかったので、
無理をせずに取り下げたのだと考えられます。

またイコモスからの勧告の参照資料がみつけられていなかった
パレスチナの緊急的登録推薦の遺産についてですが、
イコモスが現地調査を行えていないため、
現状において何が緊急的登録推薦をするほどの危機なのか不明であり、
真正性、完全性、保全計画などについても不明点が多く、
「顕著な普遍的価値」の有無を判断することができないとして、
早急な現地調査を求めるという勧告内容でした。
そのため、通常の4段階の勧告は出されていません。

今回の世界遺産委員会はポーランドで開催されており、
議長はポーランドのヤツェク・プルフラ氏が務めています。
プルフラ氏は昨日のセレモニーのスピーチで、
世界遺産条約の信頼を取り戻し、
条約の政治化を防がなければならないと話しました。
近年、世界遺産委員会の場でも政治化が問題視されており、
諮問機関との関係も含め改善が望まれていました。
ロビー活動などを全くない状態に戻すことは
もはや難しいのだとは思いますが、
諮問機関の勧告が重視され、
条約本来の遺産保護という側面が強くなるとよいなと思います。
「登録延期」や「不登録」などの勧告にはちゃんと理由があるのですから。

ちなみに今回の世界遺産委員会の委員国は、
001.アンゴラ共和国     002.アゼルバイジャン共和国
003.ブルキナファソ     004.クロアチア共和国
005.キューバ共和国     006.フィンランド共和国
007.インドネシア共和国   008.ジャマイカ
009.カザフスタン共和国   010.クウェート国
011.レバノン共和国     012.ペルー共和国
013.フィリピン共和国    014.ポーランド共和国
015.ポルトガル共和国    016.大韓民国
017.チュニジア共和国    018.トルコ共和国
019.タンザニア連合共和国  020.ヴェトナム社会主義共和国
021.ジンバブエ共和国
の21ヵ国です。

議長はポーランドのプルフラ氏、
書記はタンザニアのムハンマド・ジュマ氏、
副議長国をアンゴラ、クウェート、ペルー、ポルトガル、韓国の
5ヵ国が務めます。

今回の世界遺産委員会でどのような議論がなされるのか、
楽しみにしています。

■ 修正2017.07.04
現地時間の7月3日に世界遺産センターのHP出された記事で、
審議遺産数が33件となっていたので、本文を修正しました。

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