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2012.08.14.放送 『東南アジアの島の世界遺産 Vol.02』

アジア アジア   タグ:インドネシア共和国 
(2012-08-14 放送)

8月14日(火)     
『東南アジアの島の世界遺産 Vol.02』
      
『ボロブドゥールの仏教寺院群』
(Borobudur Temple Compounds)
インドネシア共和国/文化遺産/登録基準(ⅰ),(ⅱ), (ⅵ)/1991年登録

今月は『東南アジアの島の世界遺産』に焦点を当てていますが、
今日はインドネシア・ジャワ島にある文化遺産をご紹介します。

首都ジャカルタとバリ島のほぼ中間に位置する、
中部の古都・ジョグジャカルタの近くに建つ『ボロブドゥールの仏教寺院群』です。

登録されている3つの寺院のうち、中心となるボロブドゥール寺院は、
1辺が約115mの四角形の基壇を持つ、ピラミッド状の世界最大規模の石造仏教遺跡です。
8世紀から9世紀にかけて、中部ジャワを支配した大乗仏教を信仰するシャイレンドラ朝によって、
50年ほどの歳月を費やして築かれましたが、
王朝の滅亡と共に寺院は荒廃し、やがて火山灰と密林に埋もれてしまいました。
ところが、1814年、千年の眠りの時を経て、イギリス人のトーマス・ラッフルズが発見し、
1973年から10年間、ユネスコによる本格的な修復工事が行われました。
そして、1991年に世界遺産に登録され、多くの観光客が訪れる現在の姿となりました。

ボロブドゥール寺院は、“寺院”と呼ばれてはいるものの、
残念ながら、中に入ることはできません。

建物の構造を見てみると、115m四方の基壇の上に、
5層の方形壇と3層の円形壇がピラミッド状に積み上げられていて、
頂上には直径16mの大きなストゥーパ(仏塔)が建造されています。
基壇、方形壇、円形壇は、それぞれ仏教の三界である、
「欲界(よくかい)」「色界(しきかい)」「無色界」を示していると言われています。

各面の中央に階段があり、一気に円形壇まで登ることができます。
各階層には幅2mの回廊があり、
仏教説話をモチーフにした壁面の浮き彫りや、合計432体の仏像が設置されています。
ブッダの一生や仏教の教えを表現している浮き彫りを読み解きながら、
一段を時計回りに登っていくと、仏教の真理に到達するとされています。

円形壇まで登ると、視界が開け、厳かな気持ちになってきます。
3層の円形壇には合計72基の小ストゥーパがあり、内部には仏坐像が安置されています。
釣鐘状の小ストゥーパの石組みには、規則的な隙間があって、中の仏坐像を拝むことができます。
上段に行くほど、その隙間は狭くなり、内部は見えなくなりますが、
内部に仏像はなく、「空」の世界を表していると言われています。

そして、その東の方角には、2年前に噴火し大被害をもたらしたムラピ山を臨めます。

ボロブドゥール内の1,460面のレリーフや、合計504体の仏像は、
それだけでも、インドのグプタ美術の影響が色濃い、1級の仏教芸術作品ですが、
全体的な構造をみると、立体曼陀羅を描いていることが分かります。
立体曼陀羅は、大乗仏教の中でも、密教の世界を体現するものです。
また、ボロブドゥールが造られた時期は、ちょうど空海の生涯と重なります。
唐の長安から密教を持ち帰った空海は、
東寺や高野山に仏像を配置して立体曼陀羅を造り上げています。

仏教は、インドからアジア全域に広がりました。
インドからシルクロードの敦煌などを経由し、
唐の長安や朝鮮半島から日本に伝わってきたのが、大乗仏教です。
現在のタイやラオスを中心とした南方へは、主に上座部仏教が伝わったとされますが、
インドからスリランカを経由し、スマトラやマレー半島を通って、
ジャワ島にも日本と同じ大乗仏教が伝来していたのです。

東端の日本に伝来した大乗仏教の世界観が、
南端のジャワにシンクロするように出現するのは、大変興味深いことです。

インドや中国の仏教僧が南の海を渡ったこと、
また、スマトラ島やマレー半島を中心に、
仏教を擁護する海上交易国家が存在していたことが、記録に残されています。
人が海上を活発に往来することで、
島々に文化思想や信仰心がもたらされたのではないでしょうか。

その後、ジャワではヒンドゥー教が広がり、仏教は衰退します。
今ではイスラムの礼拝を告げるアザーン(adhan)の響く中、
椰子の木が茂る平原を見下ろす高台に、仏教寺院ボロブドゥールが佇んでいます。

仏教に馴染み深い私たち日本人には、共感できる世界遺産です。
一度、訪れてみることをお薦めします。

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