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2012.08.07放送 『東南アジアの島の世界遺産 Vol.01』

アジア アジア   タグ:インドネシア共和国 
(2012-08-07 放送)

8月7日(火)     
『東南アジアの島の世界遺産 Vol.01』
      
『バリの文化的景観
 :バリ・ヒンドゥー哲学トリ・ヒタ・カラナを表す水利システム「スバック」』
(Cultural Landscape of Bali Province
 : the Subak System as a Manifestation of the Tri Hita Karana Philosophy)
インドネシア共和国/文化遺産/登録基準(ⅱ),(ⅲ),(ⅴ), (ⅵ)/2012年登録

今月は『東南アジアの島の世界遺産』についてご紹介します。
島は、他の地域と海によって隔絶されるため、独自の文化が育まれやすい環境です。

第1回目にご紹介する世界遺産は、2012年の第36回世界遺産委員会で、
新しく登録された26カ所のうちのひとつ、インドネシア・バリ島にある文化遺産です。

バリ島は、首都ジャカルタがあるジャワ島の東に位置する熱帯の火山島です。
日本からは、就航している直行便で約7、8時間で到着します。

“神々の島”、“最後の楽園”と謳われるバリは、
海に沈む夕日や、ヒンドゥー教寺院、ケチャやレゴンダンスに代表されるバリ舞踊、
水が満々と湛えられた水田などが魅力的な世界有数の観光地です。
ところが、不思議なことに、これまで世界遺産はありませんでした。

2012年に登録された世界遺産は、“スバック(subak)”と呼ばれる
宗教的な水利管理組合が水を供給している棚田や水路、堰、寺院などが描く文化的景観です。

ひとつの水流は堰によって分水され、
それぞれの水流が各コミュニティ内で共有され、平等に水が分配されています。
9世紀頃が起源とされるスバックは、このコミュニティ内の所有者や耕作者で構成されています。
現在、バリ全体で約1,200のスバックが存在しているそうですが、
行政によって区分けされた地域的なコミュニティとは、別のものです。

インドネシアはイスラム教国家にもかかわらず、バリ島民の9割はバリ・ヒンドゥー教です。
ヒンドゥー教では、水が万物の根源であると神格化されています。
水利組織スバックは、水路や堰を造って、構成員に平等に水を分配するだけでなく、
寺院を所有し、豊穣儀礼などの宗教行事も共同で行う、宗教コミュニティなのです。

バリすべての水の源と考えられている、カルデラ湖の「バトゥール湖」は、
バリ島北部に所在し、畔にある寺院と共に登録されています。
また、5カ所の棚田地域内には寺院もあり、水源からまずは寺院へ向かって水が引かれ、
寺院から水路や堰を通って、水は水田へと流れていきます。
観光地としても有名な「プラ・タマン・アユン王宮寺院」は、
多くの仏塔・パゴダ(pagoda)があり、バリ島で最も美しい寺院と言われています。

ココナッツやコーヒーと共に、お米は主要な農産物です。
島の南側に階段状に作られた棚田は斜面に造られているため、
水の効率的な確保が難しいのですが、現在でも機能しているスバックのおかげで、
お米の生産は守られ、人口が多い地域を養う豊富な収穫が確保されています。
そして、スバックを中心に、水の神様や稲の神様に祈る宗教行事が通年行われています。

このように実利と宗教が密接に結びついた生活が根づいている背景には、
“トリ・ヒタ・カラナ(Tri Hita Karana)”というバリ・ヒンドゥー教の教えがあります。
トリ・ヒタ・カラナとは、神と人間、人間と人間、人間と自然の関係が
調和とバランスのとれていることを理想とした哲学思想です。
「神に感謝を捧げ、むやみに環境を破壊せず、人の和を重んじる」
という伝統的な精神はスバックにも反映され、農薬が殆ど使用されず、あいがも農法がなされています。
椰子の木が点在する豊かな棚田は、長閑な田園風景を創造し、バリ島の文化的景観を生み出しています。

しかしながら、近年は、水田の宅地化やゴミ問題、深刻な水質汚染問題などを抱えています。
世界遺産登録をきっかけに、保全体制が強化されることを望んでいます。

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物件種別
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