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第32回世界遺産委員会ニュース②(新規文化遺産の紹介①)

サン・マリノ初の世界遺産が誕生!

カナダ・ケベックで開かれている第32回世界遺産委員会は6日から7日にかけて、新規登録物件の発表を随時行っています。今回はイタリアに囲まれた小国、サン・マリノ共和国初の世界遺産の登録が実現しました。ここではまず、6つの新規登録の文化遺産を紹介します。

 
■フヴァル島のスターリ・グラード平地 (クロアチア)

アドリア海に浮かぶフヴァル島にある町、スターリ・グラードは、紀元前4世紀にエーゲ海のパロス島からやって来たギリシャ人によって最初に植民されて以来、そのままの姿で保存されている文化的景観です。
この平地で行われているブドウとオリーブ栽培を基本とする農業は、その頃から今日まで続けられています。石壁で区切られた小さな農地や石造りの小さな建造物がある景観は、24世紀もの間にわたって保たれてきた古代ギリシャ人由来の農業システムをあらわしています。

英 語 名:Stari Grad Plain
仏 語 名:Plaine de Stari Grad
登録基準:(ⅱ)(ⅲ)(ⅴ)

■ヴォーバンによる要塞建築の傑作 (フランス)

フランス西部にあるこの遺産は、13の要塞建築と、北の要塞に沿う建造物群からなるものです。これらはルイ14世に仕えた軍事技術者、セバスチャン・ル・プレストル・ドゥ・ヴォーバンの最も優れた業績です。そこにはシタデルや砦、塔などを含み、また山と海岸における異なるタイプの砦もあります。彼が設計した伝統的な要塞は、西洋の軍事建築の典型といえます。
ヴォーバンの要塞建築の技術はその後、ヨーロッパ内はもちろん、アメリカ大陸、ロシア、トルコ、そしてヴェトナムや日本にまでおよび、各国の軍事建築技術の分野において大きな影響を与えました。

英 語 名:Fortifications of Vauban
仏 語 名:Fortifications de Vauban
登録基準:(ⅰ)(ⅱ)(ⅳ)

■ベルリンのモダニズム公共住宅 (ドイツ)

20世紀前半のワイマール共和国時代、ベルリンでは社会的、政治的そして文化的にアヴァンギャルドな計画が進みました。この遺産は、その時代の革新的な住宅供給政策を体現する6つの団地群を含みます。
これは、低所得者の住居と生活環境を改善した公団住宅の進化をあらわす、きわめて重要な例です。都市計画、建築手法、そして公園設計などの革新的アプローチのたまものであり、デザインと技術・美的革新の斬新な手法による、都市と建築の当時としては最新の形を提供するものです。
ブルーノ・タウト、マルティン・ヴァグナー、ヴァルター・グロピウスがこの都市計画の中心人物で、今日世界中に見られる公共住宅の発展に多大な影響を与えました。

英 語 名:Berlin Modernism Housing Estates 
仏 語 名:Cités du modernisme de Berlin
登録基準:(ⅱ)(ⅳ)

■マントヴァとサッビオネータ (イタリア)

ルネサンス期の都市計画の二つの側面を代表するのが、北イタリア、ポー川渓谷にあるこの遺産です。マントヴァは既存の町をリニューアルし大胆に開発したもので、一方でそこから30kmほど離れたサッビオネータは、その当時の理想的都市をセオリーどおりに忠実に再現したものです。
マントヴァではローマ時代からの都市発展の段階を見ることができます。例えば11世紀の建造物やバロックの劇場など、いくつもの中世の様式です。16世紀後半に建設されたサッビオネータは、街路が碁盤の目状に設計された唯一の時代の都市と言い表すことができます。これら2つの町は、この地域を支配していたゴンザガ家の志向を反映した、ルネサンス期の都市計画、建築学および美術を実現化した傑作といえます。

英 語 名:Mantua and Sabbioneta
仏 語 名:Mantoue et Sabbioneta
登録基準:(ⅱ)(ⅲ)

■サン・マリノの歴史地区とティタノ山 (サン・マリノ)

ティタノ山と、13世紀に都市国家として共和国が創建されたサン・マリノ市の歴史地区を含む55ヘクタールが、この遺産の範囲です。サン・マリノは中世から今日にいたるまで独立した共和国として存在している稀有な国です。今回登録された物件としては、城砦の塔、城壁、門と砦、さらに19世紀の新古典主義建築のバシリカ聖堂、14世紀から16世紀の修道院、19世紀のプッブリコ広場と18世紀のティタノ劇場などが含まれます。
この遺産はなおも人が居住している歴史地区であり、国の制度機能のすべてが集中しているという点で顕著な例です。ティタノ山の頂上にあるという環境のおかげで、産業革命の到来から今日までの都市化の影響を受けなかった点も重要です。

英 語 名:San Marino Historic Centre and Mount Titano 
仏 語 名:Centre historique de Saint-Marin et mont Titano
登録基準:(ⅲ)

■カルパティア山脈のスロバキア側の木造教会群 (スロバキア)

かつて高地ハンガリーと呼ばれた地方の小さな寒村に、16世紀から18世紀の間に建てられた、ローマ・カトリックの2つの教会、3つのプロテスタントの教会、そして3つのギリシャ正教の教会が、世界遺産に登録されました。
これらの木造建築物は、ビザンティン文化とラテン文化の融合を特徴とし、宗教建築における豊かな地方伝統をあらわす良い例です。これらはまた、設計、内部空間そして外観においても、それぞれの異なる宗教に応じて、異なる建築様式がとられています。またこれらの教会からは、建設された時代の芸術的、建築的流行の変容を、そして教会がここの地理的、文化的背景へうまく適応した事実をよく知ることができます。
教会内部は、壁や天井を絵が彩り、遺産の文化的価値を高める芸術作品を保管しています。

英 語 名:Wooden Churches of the Slovak part of Carpathian Mountain Area 
仏 語 名:Églises en bois de la partie slovaque de la zone des Carpates 
登録基準:(ⅲ)(ⅳ)

 
※この文章は、UNESCOホームページに掲載されているニュースをもとに執筆・編集しています。https://whc.unesco.org/en/news/451/(英語) https://whc.unesco.org/fr/actualites/451(仏語)

※遺産名はまだ正式決定のものではなく、その日本語訳も世界遺産アカデミーが独自に付けたものであり、今後変更の場合があります。

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