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第32回世界遺産委員会ニュース③(新規文化遺産の紹介②)

サウジアラビアとパプア・ニューギニアからも初の世界遺産が誕生!

引き続き、第32回世界遺産委員会にて新規登録された物件を紹介します。

 
■ アル・ヒジルの考古遺跡〔マダイン・サレハ〕(サウジアラビア)

サウジアラビアで初めて世界遺産登録されたアル・ヒジルは、映画『インディ・ジョーンズ』にも登場したヨルダンのペトラ遺跡の南に位置し、ペトラと同様、ナバタイ人の文明が色濃く残る最大の遺跡です。
紀元前後1世紀頃に装飾を施された墓石群が保存状態よく残されている点や、ナバタイ文明以前に刻まれた約50もの刻印や洞窟画が残されている点がその特徴です。ナバタイ人の建築技術や水利技術の高さを顕著に示す遺跡として評価されました。

英 語 名:Al-Hijr Archaeological Site 〔Madâin Sâlih〕
仏 語 名:Site archéologique de Al-Hijr 〔Madâin Sâlih〕
登録基準:(ii)(iii)

■ ル・モルヌの文化的景観(モーリシャス)

ル・モルヌは、インド洋に張り出したモーリシャス南西部の岩山です。
18世紀から19世紀初頭にかけて、脱走した奴隷(マルーン)が、洞窟の中や山頂に小さな住居を築いて潜伏していました。鬱蒼と茂る森や切り立った崖など、人を寄せ付けない山の環境のおかげで、脱走奴隷たちはここに身を隠すことが出来たのです。
ル・モルヌは自由を求める奴隷たち戦いや苦しみ、犠牲などの象徴となっています。またモーリシャスは、多くの脱走奴隷が住み着いたため「マルーン共和国」としても知られています。

英 語 名:Le Morne Cultural Landscape
仏 語 名:Paysage culturel du Morne
登録基準:(iii)(vi)

■ 福建省の福建土楼群(中華人民共和国)

福建省南西部の120kmを越す広大な地域に、12-20世紀にかけて46もの土楼が築かれました。
それらは中庭向きに何層もの階から成っていますが、防衛のために外側にはいくつかの窓とたったひとつの入り口しかありません。800人もの人が住むことが可能で、ひとつの部族がまるごと暮らしていました。ひとつの土楼が村として機能しています。
補強された高い泥壁には、大きく張り出した瓦屋根の庇があり、それが大きな特徴です。また素っ気無い外観と対照的に、内部は装飾が施され快適な空間となっています。
福建土楼は、独特な伝統建築や共同体の生活形態、防衛組織だけでなく、周辺環境との調和も高く評価されました。

英 語 名:Fujian Tulou
仏 語 名:Tolou de Fujian
登録基準:(iii)(iv)(v)

■ イランのアルメニア人修道院群(イラン)

イラン北西部に、キリスト教の一派、アルメニア正教会の3つの歴史的修道院があります。聖タデウシ修道院、聖ステパノス修道院、そしてゾルゾルの聖マリア聖堂です。そのうちもっとも古い聖タデウシ修道院は7世紀に建造され、建築学上の顕著な普遍的価値と、アルメニア風装飾をよくあらわしています。
同様にこれらの修道院は、アルメニア正教をアゼルバイジャンやペルシアなどに広める中心地であり、ビザンツやギリシア正教、ペルシアなどとの相互文化交流を示す点も評価されました。現在ではこの地域のアルメニア文化において、完全性と真正性を備えた最後の遺産となっています。加えてここは巡礼地でもあり、何世紀もの間、アルメニア人の宗教的伝統を伝える生き証人といえます。

英 語 名:The Armenian Monastic Ensembles in Iran
仏 語 名:Les ensembles monastiques arméniens d’Iran
登録基準:(ii)(iii)(vi)

■ メラカとジョージ・タウン:マラッカ海峡の歴史都市(マレーシア)

メラカとジョージ・タウンは、500年以上の歳月をかけ、マラッカ海峡における東西の文化交流・交易地として発展してきました。アジアやヨーロッパの文化はさまざまな形でこの街に影響を与え、独特な多文化遺産を作り上げます。
メラカの政府庁舎や教会などが、15世紀のスルタンの領土だった時代から16世紀初頭のポルトガル、オランダ領へと移り変わった初期の歴史を表す一方で、住居や商業建築物が特徴のジョージ・タウンでは、18世紀のイギリス領時代の名残を強く見ることができます。この2つの街では西洋と東南アジアが混在し、独自の建築的・文化的都市景観を生み出しています。

英 語 名:Melaka and George Town, historic cities of the Straits of Malacca
仏 語 名:Malaka et George Town, villes historiques du détroit de Malacca :
登録基準:(ii)(iii)(iv)

■ ククの古代農耕遺跡(パプア・ニューギニア)

オーストラリアのすぐ北のニューギニア島。その東半分がパプア・ニューギニア独立国です。今回初めてパプアニューギニアに世界遺産が誕生しました。
ククの古代農耕遺跡は、パプアニューギニア南部の海抜1500m地点に116ヘクタールの沼地を含んでいるもので、発掘調査により、7000~10000年前から耕作されてきたことが証明されています。
この遺跡では、約6500年前に植物開拓を農業へと高めた技術の進化をみることが出来ます。木製の農具を使っての土手の耕作から溝を掘って沼地の排水を行うまで、農業技術の発展を知るよい例となっているのです。何千年もの歳月を経た農業の独自の発展を見ることが出来るこのような遺跡は、世界でも稀です。

英 語 名:Kuk Early Agricultural Site
仏 語 名:L’ancien site agricole de Kuk
登録基準:(iii)(iv)

※この文章は、UNESCOホームページに掲載されているニュースをもとに執筆・編集しています。
https://whc.unesco.org/en/news/(英語) https://whc.unesco.org/fr/actualites/(仏語)

※遺産名はまだ正式決定のものではなく、その日本語訳も世界遺産アカデミーが独自に付けたものであり、今後変更の場合があります。

※本文の無断転載はご遠慮ください。