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第32回世界遺産委員会ニュース⑤(新規自然遺産の紹介①)

貴重な鳥類の繁殖地や、地球の造山活動の見本が登録!

第32回世界遺産委員会にて新規登録された新しい自然遺産は、計8件です。その中から、まず4件を紹介します。中央アジアのカザフスタンとアラビア半島のイエメンからは鳥類をはじめとする貴重な生物の繁殖地が、スイス・アルプスと北欧のアイスランドからは地球の生成を教えてくれる山々が登録されました。

■サリアルカ:北部カザフスタンの草原と湖群 (カザフスタン)

この遺産は、ナウルズム国立自然保護区とコルガルジン国立自然保護区を含む、45万ヘクタールに及ぶ広大な区域です。シベリアヅルやニシハイイロペリカンなど、とりわけ絶滅危惧種の水鳥にとって非常に重要な湿地帯が広がります。これらの湿地帯は中央アジアの鳥類にとり、またアフリカ、ヨーロッパ、南アジアの水鳥がシベリアに渡り営巣するための貴重な中継地になっています。
エリア内にある20万ヘクタールの中央アジア特有のステップ地帯には、鳥だけでなく、ウシ科のレイヨウ(アンテロープ)の希少種、サイガも生息しています。サイガはかつては多くいましたが、密猟により劇的に減り、今では絶滅の危機に瀕しています。またここには、淡水と塩水の湖も多くあります。

英 語 名:Saryarka – Steppe and Lakes of Northern Kazakhstan
仏 語 名:Saryarka – Steppe et lacs du Kazakhstan septentrional
登録基準:(ⅸ)(ⅹ)

■ソコトラ諸島 (イエメン)

インド洋の北西、アデン湾に近いソコトラ諸島は、4つの島と、アフリカ大陸ソマリア半島に伸びる2つの岩の小島からなります。この島々は、動植物の多様性と固有種の割合の高さが際立っています。825種のうち植物の37%、爬虫類の90%、カタツムリの仲間の95%は、地球上の他のどの場所にも見られません。
絶滅危惧種も含む鳥類に関しては、この島で見られる192種のうち、44種はここで繁殖し、85種は中継地点とします。
ソコトラ諸島の海洋生物もまた多様です。253種の環礁生物、730種の沿岸魚、300種の甲殻類が生息します。

英 語 名:Socotra Archipelago
仏 語 名:Archipel de Socotra
登録基準:(ⅹ)

■スイスのサルドナ上層地殻構造地帯 (スイス)

スイス北東のこのエリアは、32,850ヘクタールの中に3,000m級の7つ山がそびえる山岳地帯です。プレート衝突による造山活動を示す顕著な例で、地学的にも、地殻構造の重なり合いや、古い岩の層が新しい岩の層を押し上げる現象がよくわかります。地殻構造を3次元的に表現している典型的な見本として、18世紀以降、地学にとって最良の教材であり続けています。
このアルプス山中は氷河に覆われ、氷河の流れが峡谷を削ってきました。アルプス山中における氷河期後の巨大な地すべりの跡も見られます。

英 語 名:Swiss Tectonic Arena Sardona
仏 語 名:Haut lieu tectonique suisse Sardona
登録基準:(ⅷ)

■スルツェイ火山島 (アイスランド)

アイスランド本島の南岸から32kmの海上に位置するスルツェイは、1963年と1967年に起こった噴火で突如誕生した、新しい火山島です。誕生以来保護されてきたため、世界中の研究者にとって他に類を見ない自然の研究所となっています。人間のすべての干渉を免れているため、この島は植物や動物にとって、自然のままでのまったく新しい大地となりました。
科学者たちが1964年に観察を開始して以来、海流に乗って運ばれた穀物の漂着、カビやバクテリア、菌類の発生が認められています。1965年には最初の維管束植物が、続いてその他の植物が加わりました。火山島の誕生から最初の10年で、10種の植物が自生しました。2004年の時点で、60種の植物、75種の蘚苔類、71種の地衣類、24種の菌類が見られます。また今日では89種の鳥類が見られ、そのうち57種はアイスランド外で繁殖しています。さらにこの141ヘクタールの島の土地に、335種の無脊椎動物まで見られるようになりました。

英 語 名:Surtsey
仏 語 名:Surtsey
登録基準:(ⅸ)

 
※この文章は、UNESCOホームページに掲載されているニュースをもとに執筆・編集しています。https://whc.unesco.org/en/news/(英語) https://whc.unesco.org/fr/actualites/(仏語)

※遺産名はまだ正式決定のものではなく、その日本語訳も世界遺産アカデミーが独自に付けたものであり、今後変更の場合があります。

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