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2010年 新規登録物件紹介 ②

2010年 世界遺産委員会ニュース②

中央アジアのタジキスタンに初の世界遺産誕生!

ブラジルのブラジリアで7月25日~8月3日に開催された「第34回世界遺産委員会」で新規登録が決まった21物件(文化遺産15件、自然遺産5件、複合遺産1件)のうち、前回(文化遺産5件、自然遺産1件、複合遺産1件)に引き続き、今回は文化遺産5件、自然遺産2件を紹介します。

【新規文化遺産】

● 司教座都市アルビ (フランス共和国)

フランス南西部、ガロンヌ川支流のタルン川沿いに位置する古い都市アルビは、ポン・ヴィユー(古い橋)やサン・サルヴィ教会(10~11世紀)をはじめ、中世における建造物と都市計画の発展を今に伝えています。13世紀に入り、キリスト教の異端とされたカタリ派(アルビジョワ派)の拠点のひとつとなりました。1209年、教皇庁の支持のもとフランス王フィリップ2世は「アルビジョワ十字軍」を結成し、南仏諸侯を撃破し、カタリ派信徒を殺害しました。1299年に十字軍が終結し、南仏が北部のフランス王国の版図に組み込まれると、平定されたこの都市は、カトリック教会が支配する強力な司教座都市となりました。サント・セシール大聖堂は城砦に囲まれており、地元産出の赤色とオレンジ色を帯びたレンガでつくられた、世界最大のレンガ造りの教会建築であり、南仏独特のゴシック様式です。まるで要塞のようなその姿は、住民に威圧感を与えてカトリックの圧倒的な力を誇示するかのようで、回復された教皇庁の影響力を物語っています。そして教会の横、中世の住居が並ぶ地区に囲まれ、川にせり出して立つ建物が、司教の館であるベルビー宮殿です。司教座都市アルビは、何世紀にもわたって外からの大きな変化を受けずに、建築物と街並みの同質性のある調和を保ち続けてきたのです。

英 語 名:Episcopal city of Albi
仏 語 名:Cité épiscopale d’Albi
登録基準:(iv)(v)

アルビのサント・セシール大聖堂


● 韓国の歴史的集落:河回村と良洞村 (大韓民国)

14~15世紀につくられた河回村と良洞村は、韓国におけるもっとも代表的かつ歴史的な、氏族社会の村です。これらの村の場所と配置は、木々に覆われた山に守られ、川と開けた田畑に面しており、朝鮮王朝(1392~1910)初期における儒教主義の支配階級の文化を色濃く表しています。2つの村は、周囲の景観から実体的な、また精神的な要素を一度に引き出せるよう配置されています。村内には、指導者一族の館、その他の氏族メンバーの堅固な木造の住居、東屋、儒教の学校、庶民によって古くから守られてきた荒壁土でできた壁をもつ藁葺き屋根の平屋家屋などが残っています。村の周囲の山、木、水、隠れ家のような家々に取り囲まれたパノラマは、17~18世紀の詩人たちによってその美しさを賞賛されました。

英 語 名:Historic Villages of Korea: Hahoe and Yangdong
仏 語 名:Villages historiques de Corée : Hahoe et Yangdong
登録基準: (iii)(vi)
● サラズム – 原始都市遺跡 (タジキスタン共和国)

「地の始まるところ」を意味するサラズムは、紀元前4世紀~紀元前3世紀にかけての中央アジアにおける、定住民の植民を証言する考古遺跡です。この遺跡からは、この地における早熟の原始都市の発展の様子を知ることができます。中央アジアにある古い遺跡の中で、ここサラズムの中心地は、遊牧民による家畜の放牧に適した山岳地帯と、この地の最初の定住者による農業と灌漑の進展に好都合な大きな渓谷に挟まれた場所にあります。サラズムはまた、トルクメニスタン、イラン高原、インダス川からインド洋までの渓谷部といった中央アジアのステップ地帯の間で、ものの移動と文化交流、商業的な結びつきが存在したことを明らかにしています。

英 語 名:Proto-urban site of Sarazm
仏 語 名:Site proto-urbain de Sarazm
登録基準:(ii)(iii)
● アルダビールのシャイフ・サフィ・アッディーン廟と神殿群 (イラン・イスラム共和国)

16世紀初頭から18世紀末までの間に建設された、スーフィズム(イスラム神秘主義)の指導者、シャイフ・サフィ・アッディーンの霊廟は、イランの伝統様式を用いた建造物です。建造者たちは、この建造物がもつ多様な機能を生かせるように、限られた空間から最大限の部分を引き出す術を知っていました。その機能とは、とりわけ図書館、モスク、学校、霊廟、貯水槽、病院、キッチン、パン屋、そしてオフィスなどです。この遺産では、シャイフの聖域へといたる道に7つの階段がありますが、これはスーフィー神秘主義の7つの段階を表しており、8つの門はスーフィズムの8つの態度を示しています。同様にこの遺産は、古いオブジェの目を見張るようなコレクションや、美しく装飾されたファサードや室内も特徴です。中世イスラム建築の貴重な結晶ともいえる遺産です。

英 語 名:Sheikh Safi al-Din Khānegāh and Shrine Ensemble in Ardabil
仏 語 名:Ensemble du Khānegāh et du sanctuaire de Cheikh Safi al-Din ? Ardabil
登録基準:(i)(ii)(iv)
● ジャイプールのジャンタル・マンタル -マハラジャの天文台 (インド)

インド北部のジャイプールにあるジャンタル・マンタルは、18世紀初頭、この地を治めていたマハラジャ(藩王)のジャイ・シン2世によって建造された、20以上の建造物からなる天体観測施設群です。レンズを通してではなく裸眼で星の動きを観察することが目的であり、建築においても部材においても当時の最新技術が導入されました。この遺産は、インドにおける古い天体観測施設としては、もっとも特徴を残し、もっとも完全な状態で保存されているものです。ムガール帝国の末期に、知識派王子の側近の専門家らによって獲得された、天文学の能力と宇宙論の概念を表しています。

英 語 名:The Jantar Mantar, Jaipur
仏 語 名:Jantar Mantar, Jaipur
登録基準:(iii)(iv)

【新規自然遺産】

● 中国の丹霞山 (中華人民共和国)

中国の丹霞山は、地球内部の力(特に隆起)や外部の力(侵食など)の影響を受けて、赤色の大地が崩れた結果生じる沈殿物が、積み重なって形成された山の景観です。今回登録された遺産は、中国南西部の亜熱帯地帯に位置する6つの地域からなります。ここの景観は、巨大な赤い断崖や、すべての段階の起伏や侵食、とりわけ自然に形成された見事な石柱や小塔、峡谷、渓谷や滝などから特徴付けられます。これらの起伏の多い景観は、亜熱帯の常緑植物や、数多くの動植物の保護に寄与しており、これらのうちの400種は希少種もしくは絶滅危惧種と考えられています。

英 語 名:China Danxia
仏 語 名:Danxia de Chine
登録基準:(vii)(viii)
● プトラナ台地 (ロシア連邦)

この遺産は、ロシアのプトラナ国立自然保護区と一致していますが、中央シベリアの北部、北極圏まで数百キロメートルの場所に位置します。世界遺産に登録された台地の部分は、孤立した山脈の中で北極と亜北極の完全な生態系が保護されています。例えばタイガ、ツンドラ、砂漠、そして無垢の冷水が流れる河川・湖沼システムなどです。ここはまた野生のトナカイの移動先でもあり、その規模の大きさと、最近は次第に珍しくなっている点において、特筆すべき自然現象ということができます。

英 語 名:Putorana Plateau
仏 語 名:Plateau de Putorana
登録基準:(vii)(ix)

※この文章は、UNESCOホームページに掲載されているニュースをもとに執筆・編集しています。https://whc.unesco.org/en/newproperties/(英語) https://whc.unesco.org/fr/nouveauxbiens(仏語)

※UNESCOのニュースだけでなく、歴史書や、物件を保有する国・自治体など現地の組織が提供する情報などを、解説文中に加えているものもあります。

※新規登録物件および範囲拡張物件の遺産名はまだ正式決定のものではなく、その日本語訳も世界遺産アカデミーが独自に付けたものであり、今後変更の場合があります。

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