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■ 研究員ブログ87 ■ アメリカ合衆国は自由の国でいられるのか……独立記念館

Brick clock tower at historic Independence Hall National Park in Philadelphia

今年はいよいよアメリカ合衆国大統領選挙の年ですね。
予備選挙も始まり、ニュースを見ているだけの僕まで、
なんだかわくわくとしてきます。
……最近の春らしい陽射しの所為かもしれないのですが。

日本の政治は失言やら不倫やら、
政治そのものではないところでばかり話題になり、
悲しくなってきてしまうのですが、
米国の予備選挙でも、「おまえの母ちゃんでべそ!」的な低レベルのやりとりが
ニュースで取り上げられていて、もう笑うしかないですね。
アメリカ合衆国の大統領が誰になるのかは、
米国の影響力が低下してきているとはいえ、
世界の政治や経済に大きく関係してくるのですから、
もう少しちゃんとやってよ! なんて思ってしまいます。

今日も、ローマ教皇フランシスコが
候補者ドナルド・トランプ氏の移民排斥の発言を
「壁を作ることだけを考え、橋を作ろうとしない人物はキリスト教徒ではない」
と批判したと報じられていました。

キリスト教徒かどうか、という議論はさておき、
ドナルド・トランプ氏の考え方は、
パフォーマンスの面も大きいと思いますが、
「アメリカ独立宣言」に反しています。

1776年7月4日に採択されたアメリカ独立宣言には、
「すべての人は平等に造られ、造化の神によって、
一定の譲ることのできない権利を与えられている。
その中には、生命、自由、そして幸福の追求が含まれている。」
と書かれています。

その宣言の精神が崇高であったため、
多くの人々がアメリカ独立のために立ち上がったのです。
『自由の女神像』が独立宣言書を手にしているのもそのためです。

そもそも、17世紀初頭に海を渡ってアメリカ大陸に移り住み、
ニューイングランド植民地を築いたピルグリム・ファーザーズは、
ヨーロッパでの国王が支配する古い社会体制やしがらみを逃れ、
信仰の自由などを求めて海を渡ったのでした。

社会問題や雇用、麻薬などの複雑な問題があり、
不法移民が大きな課題になっているのは理解できるのですが、
不法も含めた移民が作り上げた「自由の国」なのですから、
国境に壁をつくる前に、独立宣言の精神に立ち戻り、できることがあるはずです。

この、自然法のロックの考え方に強い影響を受けた
アメリカ独立宣言が採択された議事堂は、
『独立記念館』として世界遺産に登録されています。

1776年7月8日、独立記念館の鐘の響きを聞きつけて集まった人々は、
そこでアメリカ合衆国の独立宣言の朗読を聞き、
新しい国が自分たちの力で誕生したことを実感しました。

アメリカ合衆国大統領選挙は、来年1月までの長い選挙ですが、
国民が直接、自分たち自身で国家のリーダーを選び、
4年間は責任をもって任せる、というのは羨ましくもあります。
「責任」は選んだ方の責任でもあるのですから。

世界遺産は、それぞれの国や文化にとってアイデンティティとなるものです。
『独立記念館』はまさしくアメリカ合衆国の軸となる理念が生まれた場所ですので、
今年は大統領選挙と共に、『独立記念館』や『自由の女神像』にも
注目してもらいたいと思います。

不寛容が世界的に広がりつつある中で、
アメリカ合衆国が「自由の国」と自らを謳いあげていけるのか。
目が離せないですね。