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● マイスターのささやき:GW関西世界遺産紀行 ~マイスターが限界にチャレンジ・7日でいくつ回れるか!?~その②

世界遺産検定マイスター 本田陽子

◆ 高野山で空海パワーにやられる

「古都京都の文化財」、そして「紀伊山地の霊場と参詣道」、これらを調べていると、共通するキーワードが表れます。

───「空海」。

「京都」においては17資産のひとつの教王護国寺(東寺)、
「紀伊山地」においては登録されている3つの霊場のうちの一つの高野山。
これらは空海が開きました。

ところで、前回お話した「関西パワスポWalker」、その一文がわたしの心をぐっと捉えていました。

「ゼロ磁場」、すなわち二つの地層がぶつかりあってエネルギーが凝縮している場所というものがあり、日本列島の関東地区から九州阿蘇地区までをライン状に貫いているらしいんですね。
そのラインには、伊勢神宮、諏訪大社、阿蘇山、などそうそうたるパワースポットが立ち並んでいるんです!
そして我らが高野山もそのひとつってことなんですよ!!(興奮してるのわたしだけですか)

最近パワスポに並々ならぬ関心を抱いているわたしは、なんだかよくわからんが高野山はともかくすごい、こりゃあますます行かねばならん、と世界遺産そっちのけでテンションがあがっていきました。

高野山予習に入る前に、「京都」のひとつ、東寺から先に学習に入ったんですが、
どうやら空海はタダモノではない、というのがわかってきました。
東寺は京都駅へ電車が差し掛かるときに南側に見える五重塔、あれですね。
金閣寺とか銀閣寺のようなメジャー感がなく、積極的に観光に行く人はあまりいないんじゃないでしょうか。
わたしも完全にノーマークでした。
……が、仏像好きな人の本をあさってると、東寺の講堂にある「立体曼荼羅(まんだら)」ってのが大絶賛されてるわけです。
立体曼荼羅の話は、わたしの記憶が残っていればいずれまたしますが、ともかく、こんなのを考えた空海はすごい! とこれまた絶賛されてるわけです。

彼は804年に遣唐使として唐にわたり、たった2年で密教の奥義を修得して日本に戻ります。
2年ってのもありえないし、入唐する前に中国語はペラペラ、仏教理解に必須であるサンスクリット語も数ヶ月でマスターしたとか。
日本で3本の指に入る達筆だし、左右の手足と口を使って5本の筆を一度に操ってるし、
雨乞いはするし、いったいどんな人なんでしょうか……。

4月28日。
世界遺産1ヶ所目は高野山です。広大ですから、もちろん今日はここだけにします。

とんでもない急斜面をケーブルカーで上って行った先にある高野山は、奥深い山の中に開かれた宗教都市、とでもいうのでしょうか、だけどそこは「密教」とか「秘境」というイメージから来る排他的な空気は微塵もなく、訪れた人を誰しもやわらかく包んでしまうような明るさが感じられる土地でした。

語弊があったらいけないんだけど「宗教のテーマパーク」という言葉が似つかわしいような気がしたんです。2000円の入場料で楽しめて、宿坊に泊まることでプチ仏教体験もできる体験型複合施設。
ちなみに、主要な見所を回れるセット拝観料は4月から改定されたそうです。わたしのリサーチでは1500円だったので(こういうことは忘れない)確認したところ、「値上げになったけど、そのかわりおみやげがつきますよ」とのことでした。
奥の院でもらえるおみやげってのがまたスゴイんですけどね…・・・これは行った人だけのお楽しみです。

空気がすがすがしくて、てくてく寺院をめぐって、セット拝観券の中にはお茶菓子も含まれてて、
標高が高いから遅咲きの桜も見ることができて、高野山ってなんていいところなんでしょう、
と思わずにはいられませんでした。
ここには空海の魂が息づいていることをすんなりと受け止められました。
彼は受容性が高い人なんじゃないでしょうか。テーマパーク発言も笑って聞き流してくれそうな気がしました。
こればっかりは、いくら予習してもわからないですね。だから旅は面白い。

壇上伽藍や金剛峯寺を見て、高野山の聖地中の聖地といわれる奥の院へ。
たくさんの供養塔が並ぶ様は壮観です。なかにはシロアリ協会の「シロアリ供養塔」も!!
織田信長と明智光秀を共に弔い、さらにはシロアリまでも……。
心広すぎです、高野山。

奥の院のそのまた一番奥には、空海の御廟があります。
ちなみに空海はここで即身成仏を果たして、今もなお生き続けている、とされています。
御廟に行く手前の「御廟橋」を超えると、そこは聖域。橋の先は撮影も禁止されています。

空気が変わった……。
そして、一番突き当たりに位置する御廟の前に立っておまいりをしたときのこと。

……こ、これは来ている……!!!

わたしには霊感などまったくありませんが、強い気を感じずにはいられませんでした。
手がピリピリしているではありませんか。

「あのさー、来てる?」

「……来てますね。」

友人も同意してます。

一度御廟の前を離れたら、手のピリピリがおさまりました。もう一周して戻ったところ、またピリピリが。

空海さん、すごいよ……。

高野山で空海からパワーをもらったせいなのか、その後の旅は、我ながらよく体力持つなあ、
と思うほど活動的に動けたのでした。

いままでに読んできた空海の数々の超人伝説が、奥の院の体験で一気に腑に落ちてしまい、
今一番気になる人なので、旅から帰った後もまた図書館で本を借りています。
「空海ブーム」、もしかしたらリアルに起こるかもしれません。
今年の夏に東京国立博物館で「空海と密教美術」展が開催されるんです!
これも空海のお導きでしょうか。

はっ……あかん、話が「世界遺産紀行」ではなくて「パワスポ紀行」になっている……。
(※世界遺産アカデミーはスピリチュアルな方向とは一切関係がありませんので念のため)

世界遺産という観点から見ると、他の2つの霊場や参詣道も知ってこそ「紀伊山地の霊場と参詣道」の全体像がつかめると思いますが、平安時代より綿々と受け継がれた山岳信仰の一端に触れることができた、というのは大きな収穫でした。
1000年以上もの間、数え切れないほどの修行者が参詣者がたどりつき、落としていった悩みや苦しみ、穢れを、紀伊の豊かな自然や仏様がすーっと引き取ってくれたんじゃないかな、と凛とした空気の中で感じたのでした。

つづく