whablog
NPO法人 世界遺産アカデミーTOP  >  オフィシャルブログ  >  ● マイスターのささやき:マイスターの弾丸世界遺産紀行 ~パリで年越し編①~

● マイスターのささやき:マイスターの弾丸世界遺産紀行 ~パリで年越し編①~

世界遺産検定マイスター 本田陽子

○ 年越しは「ベルサイユのばら計画」!

 昨年の、夏の終わりかけのころだったでしょうか、職場でわたしの斜め向かいに座る女性がこう言いました。(わたしは普通の勤め人です)
「ホンダさん、正月にパリに行くことにしたので、『ベルばら』にハマることにしました。」
そのときは、「へー」としか思いませんでした。まさか自分自身が「ベルサイユのばら計画」を進めることになろうとは、そして年越しをおフランスで過ごすことになろうとは、想像だにしていなかったのです・・・。

 こんにちは、昨年、この「マイスターのささやき」で京都・奈良紀行を書かせていただいた本田陽子です。年末年始にかけて、パリと、その近郊にある世界遺産を駆け巡ってきました。旅の基本スタイルは前回の紀行文のときと全く変わってないですね・・・。世界遺産に照準を定めて、限られた期間の中、朝から晩までひたすら修行のように回っていくという(笑)。だから、タイトルも「弾丸世界遺産紀行」です。
唯一の大きな違いといえば、準備(予習)期間があまりに短すぎたことでしょうか。前回は「準備がイノチ」だとまで言い切っているのに!その原因は、「今回はガツガツ下調べなんてしないで、気の向くままに世界遺産を肌で感じるのよ~ホッホッホ!」とばかりに余裕をぶっこいていたから・・・。
ウソです。すいません。単に、旅の計画をたてたのが遅すぎたからです。ようやくパリ行きのチケットを買ったのが、12月20日ごろだったもので・・・。
 ともかく、これで、冬休みは「ベルサイユのばら計画」でいくことが決まりました!(といっても、冒頭の同僚と一緒にいくわけではありませんが・・・。あちらはご夫婦、わたしはひとり←それがなにか?) 計画の第一弾として、あわてて彼女から、「ベルサイユのばら」の漫画全巻を借りて一気読みし、テンションも上がる上がる!頭の中にこだまするのは、もちろん「♪バラはバラは~~~~」ですよ!

今回は、漫画の舞台となったヴェルサイユ宮殿(※細かいんですが、表記は「世界遺産検定公式テキスト」に基づきます)や、そして教会や中世建築を中心とした世界遺産めぐりのお話に、パリの年越しの様子を織り交ぜて、この寒い冬をほんの少しでも暖かく乗り切ってもらえるよう、以前にも増して暑苦しい紀行文をお届けしたいと思います。(・・・)

○中世ヨーロッパ建築に突如ハマる

  少し時間を戻して、去年の夏。わたしは韓国で世界遺産めぐりをして、すっかりそのとりこになっていたんです。冒頭の同僚の発言は、まだ韓国の余韻にひたっていたころに聞いたんだったかな。
韓国での旅は、日本に伝来した文化や仏教のルーツをたどることができて、すごく面白かったんですが、さらに韓国コスメとBIGBANGというK-POPグループにもハマってしまいました。日々友人に「韓国のかたつむりクリームはすごい!」と連呼して洗脳し、youtubeでBIGBANGの動画を検索して1日が終わっていました・・・。世界遺産はどこにいったんだって感じですが・・・。世界遺産を入口に、異文化理解が深まったってことです。(なんか前も同じこと言ったかも)

 韓国熱も落ち着いた頃に浮上した次なるブームは、中世ヨーロッパ建築でした。世界遺産検定2級の対策講座で、ヨーロッパ建築の変遷のお話をしたんですが、調べていくうちにすごく面白くなってきたんです。
かなりざっくりとした話ですが、中世ヨーロッパの建築や美術の発達は、キリスト教と結びついていると言っていいかと思います。前者は教会建築であり、後者はその装飾や絵画を中心として発達していったんですね。
わたし自身はキリスト教に関する知識はとても十分とはいえないんですが、建築の変遷は「カタチ」から入ることができるから、比較的わかりやすく感じられました。さらに中世の建築の根っこには古代ギリシャや古代ローマの影響があって、そういうのを紐解いていくのも面白かったですし。
 
かつてヨーロッパや南米といったキリスト教圏でずいぶんと長い旅をしていたので、かなりの数の教会を訪れはしたものの・・・さしたる興味も知識もなかったため、「教会」というひとくくりでしか見ていませんでした。(ぎりぎり、ネギ坊主はなんか違う、というレベル・・・おい~) 各教会が建てられた時代背景も知らないし、ディティールもよく見ていないし、単に空間に身をおいていただけだったんです。
 キリスト教信者でもなく、キリスト教文化にも興味がない人間が、教会に行くというのはどういうことかというと、「ガイドに載ってる」、「休憩」、「寒さしのぎ」、「たまに演奏を聴ける」、「運がよければ食料を配給してもらえる」・・・からでした。寒空の下、あるいは雨宿りで教会に駆け込んでずいぶんと救われたものです・・・。
すっすいません、こんなに軽くて。キリストさん、信者の皆さん、ごめんなさい!

・・・で、何を言いたいのかというと、ちゃんと実物を見たくなってきたわけです。2級対策の講義では、「ロマネスク様式というのは、石造りの厚い壁でできています」「ゴシック様式は、高い天井とリブ・ヴォールトと言われるアーチが特徴です」なんて物知り顔でお話していました。でも、いまひとつ実感を伴わないんだな。。
 旅に行こうという具体的な目的があったわけではないのですが、なんとなく、世界遺産になっている教会ってどんなところがあったっけ?と調べ始めていました。
ヨーロッパでいうと、フランス、ドイツ、スペイン、イタリア、さらにはロシア、北欧・・・と各国でかなりの数の教会や修道院が登録されているんですが、改めて、「多っ!!」と感じました。世界遺産の登録基準である「顕著な普遍的価値」(=平たく言うと、「どの時代の、どの国、どの民族の人にとっても『すごい!』と思わせる価値」、あるいは「ナンバーワンかつオンリーワンの価値」と言ってもいいかも)を持つ教会がゴロゴロあるということになります。う~~~む~~~。
 余談ですが、日本では、「城郭建築」として、姫路城だけが世界遺産となっており、彦根城はずっと暫定リストに載ったままなんですね。日本の城として代表性を持つものは姫路城、と認識されたがゆえに、他のお城の登録がなかなか厳しい状況にあります。(正確にいうと京都の二条城も世界遺産ですが、ここは二の丸御殿の屋敷としての価値が認められたということで、ちょっと意味合いが違うようです)
かくも、世界遺産登録への道というのは難しいものがあるんですが、世界遺産という概念が誕生した経緯、特に文化遺産の着想がヨーロッパに端を発したことを考えると、登録がヨーロッパ寄りになるのはやむをえないのかもしれません。(もっと知りたい!という人は、世界遺産検定3級を受けてみよう!)
 
・・・はっ。話がそれました。ヨーロッパの都市の中で、教会や中世建築の世界遺産が比較的集中しているところ、ってどこだと思いますか?
わたしの調べでは、「パリ」なんです!!まずパリにおいては、「パリのセーヌ河岸」として、セーヌ川の河岸に多く存在する、パリの歴史を代表する建築物群が世界遺産となっています。そして、ちょっと郊外に足を伸ばすと、ゴシック建築の傑作といわれる「シャルトル大聖堂」や、中世に繁栄していた「中世市場都市プロヴァン」 があります。そして、もちろん「ヴェルサイユ宮殿と庭園」! 宮殿ということでは、ヴェルサイユほどメジャーではないと思われますが、「フォンテーヌブローの宮殿と庭園」もあります。「パリ」かあ・・・
 わたしの中で、パリの存在感がだんだん大きくなってきたころと前後して、職場でちょっと長めの冬休みがとれることになりました。明らかに旅行代金が高騰する年末年始に、自分の懐事情に反してパリに行くって暴挙だよなあ・・・と、さんざん迷ったあげく、ウオリャアアーーーーー!!!と、航空券を購入するオンラインサイトのボタンをクリックしてしまいました。迷った、なんて言ってるけど、地図を見たり調べ物を始めた時点で、旅へのレールに乗っかっちゃってたんですけどね。

○訪問予定の世界遺産

今回訪問するのは、前述した5つの世界遺産に絞込みました。改めて、以下のとおりです。出発まで1週間くらいしかなかったので、突貫で知識を詰め込みました。

・ パリのセーヌ河岸 
実は、セーヌ河そのものが世界遺産なのかと勘違いして、どういう文化的価値があるんだろう、とナゾに感じていました・・・(汗)。パリの歴史は、川の中州にあるシテ島(ノートルダム寺院があるところです)から始まっていて、そこから徐々に都市としての機能が拡大していくんですね。よって、セーヌ河岸には、パリの歴史を代表するような建築物が多いんです。ノートルダム寺院はもちろんのこと、ルーブル美術館(かつての王宮)しかり。エッフェル塔も含まれます。
下準備として、ざっとパリの歴史やルーブル王宮の成り立ちなどを調べました。

・ シャルトル大聖堂
 12世紀ころから、パリを中心に、教会は、どんどん上へ上へと高さが増していきます。「ゴシック建築(もしくはゴシック様式)」と呼ばれる建築様式です。パリから1時間ほどの町、シャルトルには、ゴシック建築の最高峰といわれる、シャルトル大聖堂があります。ステンドグラスの中に閉じ込められた美しい青色は「シャルトルブルー」と称されています。・・・なんだかロマンチックな響きです。 
 ざっくり成り立ちや特徴を調べていきましたが、ステンドグラスの絵解き法まではとても至りませんでした。。

・ 中世市場都市プロヴァン
 今回調べるまで、その存在を知りませんでした・・・。(南仏に「プロヴァンス」という地方がありますが、別物です。) パリ郊外の、中世に交易で繁栄した町です。交易の中心地が移ってしまったあとは廃れてしまったんですが、結局それによって開発の手が入ることなく、中世の雰囲気がそのまま残されることになりました。 
ここはあんまり情報を入手できなかったんですが、プロヴァン観光局のHPでなんと日本語の地図をプリントアウトできたので、それを持っていきました。(後にこれに救われることに・・)

・ ヴェルサイユ宮殿と庭園
もうここは言わずと知れた、という感じですが、「ベルサイユのばら」を読んだところ、フランス革命へと時代が動いていく様子が非常によくわかりました!! いやーほんと名作だわ!!アンドレーーーー!!
ここは、「太陽王」と呼ばれ、絶対君主として君臨したルイ14世が宮殿として建造しました。その後、ルイ16世とマリー・アントワネットの時代にフランス革命へと突入し、王朝も宮殿も終焉を迎えるわけです。ずいぶん昔にも訪問しましたが、その辺のことはあんまりよくわかってませんでした。

・ フォンテーヌブロー宮殿と庭園」
 パリ郊外に、広大なフォンテーヌブローの森があります。歴代のフランス王はここに宮殿をつくって、狩猟や滞在を楽しんでいたんですね。かのナポレオンもこの宮殿をこよなく愛していたとか・・・

 上記の5つのほかにも、いろんな教会や中世建築を見たいし、余力があれば、暫定リストに載っている「ル・コルビュジェの建築と都市計画」の構成資産のひとつである、「サヴォア邸」も行きたい!(ちなみに、昨年の審査で不登録勧告されましたが・・・。上野にある「国立西洋美術館」も資産のひとつです)

今回とれた休みはお正月を挟んで8日間。なんですが、一番安い航空券を選んだ結果、えらく遠回りしてパリに行くことになり、実質5日ちょっとしか滞在できないことに・・・。そして冬のヨーロッパって、日照時間がけっこう短いんですよね!ってことはいろんな施設の閉館時間もちょっと短いんですよね!さらに元旦はほとんど閉館しちゃうんですよね!マズイ、予定どおり回れるんだろうか・・・。

・・・訪問するにはあまりいい条件がないんですが、それを補って余りある強い味方が!!すなわち「円高」!! 打撃を受けている関係者の方々には恐縮ですが、これはもう享受するしかないでしょう。
 さらに、パリの年越しに関する情報を調べてみると、えらく楽しそうじゃないですか!!凱旋門とかエッフェル塔が見えるところで、みんなシャンパンを片手にお祝いするらしいし。しかも、カウントダウンのときに、目があったら誰とでもチューをするらしいし!!この都市伝説が実際どうだったのか、それはまたいずれ。。

ということで、すっかり長くなりました。次回から旅の様子をお伝えしますね!
Au revoir…