● マイスターのささやき:モロッコを旅して(番外編)
世界遺産検定マイスター 根本潤子
アッサラーム アレイコム! みなさま、こんにちは。
モロッコの事なんて、もう忘れてしまったわ、、、と言われるほどの
ご無沙汰でした(すみません!)
長らくご無沙汰しているうちに、無形文化遺産に『和食』がノミネートされたという
嬉しいニュースが届きました。
そこで、今回は番外編としまして、モロッコの食文化をご紹介しようと思います。
『和食』と言っても、茶懐石や会席料理ではなく、
「おせち料理」に代表されるような、季節ごとの年中行事と旬の食材を楽しむ、
日本ならではの食文化のコラボレーションとして、登録されたら嬉しいです。
食文化というのは、その国の人々が、伝統や日常の暮らしから醸し出す独特のもので、
「お国柄」が色濃く反映されます。『和食』も、人に対する礼節や「おもてなし」の
心が自然とはぐくまれてきたように思います。
さて、モロッコの人々もおもてなしが大好きな民族。
他に類を見ない独自の食文化をご紹介。
まずは、モロッコを代表する「タジン料理」。
2~3年前に、日本でもちょっとブームになった、
とんがり帽子のようなフタを載せた、タジン鍋で作る
煮込み料理の総称。
*これは、お土産に現地で購入したもので、
料理を出すと、フタはすぐに取り去られるので、ご参考までに。
素焼きのタイプは直火で使用する、普段使い。
柄のあるタイプは、あらかじめ別に煮た料理をその中に移し、
お祝いやおもてなし用に使うのだそうです。
モロッコは、砂漠地帯のため、水がとても貴重。
そのわずかな水分で、美味しく調理するために考えられた形だそうです。
朝昼晩と、一日3回食卓に登場するタジンは、
野菜からの水分が、とんがり帽子の上部に集まり、
内側をつたって食物全体に美味しさが広がります。
七輪を起こすところから始まり、切った食材を並べ、
フタをして待つこと約40分のスローフードです。
昼食は、学校や職場が昼休みとなり、各家庭にもどり
家族揃って食べる習慣です。
タジンの材料には、イスラム圏なので豚肉は使わず、
牛・羊・時にはその挽肉(ケフタという料理)があり、
野菜は、玉ねぎ、にんじん、なす、ズッキーニ、パプリカ等
お馴染みの野菜が入り、組み合わせでバリエーションも豊富。
また、金曜の安息日には、クスクス(世界最小パスタで、
あらかじめ蒸したものを敷き詰める)に、肉や野菜のスープを
かけて食べる、一番のご馳走のメニューが登場するのです。
味付けは、シンプルな塩味。
暑い土地柄でも辛い味は無く、スパイスも少な目でやさしい薄味。
肉や野菜本来の味を楽しむ味付けなのです。
メイン料理がタジンとすれは、前菜にあたるのはモロカンサラダ。
なす、にんじん、ひよこ豆などをコトコト煮た小皿料理が4~5個並ぶことも。
モロッコの主食のホブスという丸いパンが、真ん中にどーんと置かれ、
続いて出てくるタジンをみんなで取り分けるのです。
ホブスは、アラビア語でパンという意味で、柔らかくとても食べやすいものでした。
朝は、種類豊富なジャムやはちみつをつけ、クリームチーズと共に食べ、
昼、夜は、ちぎっておかずにつけて食べるのがモロッコ風の食べ方とか。
田舎では各家庭で焼くのですが、大きな街では、お母さんたちがこねたパン種を
子どもたちが共同窯に持ち寄り、昼休みに焼きあがったホブスを持ち帰り昼食に。
食後のフルーツとして、毎日山盛りに出されたハネジューメロンは、とても甘く
水分がたっぷり補給できる感じでした。
イスラム圏なので、アルコールの提供は観光客のみ。
カサブランカという日本でも目にするビールは、小瓶でも800円と超セレブ価格!
フラッグビールという地ビールの小瓶が360円程度で、人気がありました。
ワインも、赤白とも揃っていて、メクネスはワインの有名な産地です。
「サハリ」というワインは、ロゼをさらに薄くしたような灰色のワインと聞き、
お土産にしようとずいぶん探したけれど、とうとう見つからずとても残念でした。
アルコールを飲まないイスラムの人たちは、甘い物が大好き。
フルーツの上に載った、シュバキアというお菓子は、日本のかりんとうのようなもの。
街では、焼き菓子を山のように積んで売る店もあちこちで見かけました。
モロッコは、かつてフランス領だったこともあり、カフェ文化が根付いています。
街のあちこちにはカフェがあり、なぜか朝から男性ばかり大賑わい。
女性は、宗教上の理由で長時間滞在が禁じられているため、持ち帰りのみ。
だから、お客は男性ばかりとなるわけなのです。
モロッコのお茶といえば、ミントティー。
中国茶を、ミントティーポットでぐつぐつ沸かし、
その中に、生のミントの葉をドサッと入れ、
続いて、棒状の角砂糖をドンと注入し、
ぐるりとかき混ぜて出来上がり。
高い位置から、美しい模様入りのミントティーグラスに注ぎ、
熱いまま提供されます。
飲んでみると、それほど甘くはなく、ほんのわずかにミントの風味が残ります。
さわやかで美味しいけれど、茶こしで濾して飲む日本人にとって、
ミントの葉や茎がごちゃごちゃ入ったミントティーは、ちょっと飲みにくかったです。
もう一つの飲み物がノスノス。ハーフ&ハーフの意味、つまりカフェオーレのこと。
でも味は、まさに、お風呂上りのコーヒー牛乳の懐かしい味でした!
100%フレッシュなオレンジジュースは、最高に美味。
目の前で、冷たいオレンジを丸ごとギュッと絞ってくれるのです。
一方、生ものはちょっとね、、、という方が、コカコーラを注文したところ、
コンセントが抜けた(冷たくない)冷蔵庫から取り出され、
「スカッとさわやか」とはいかなかったようでした。
車窓から見かけたのは、ナツメヤシの実。
デーツと呼ばれ、栄養豊富なドライフルーツです。
昔から、ベルベル人の食べ物として、好まれています。
街でも、やはり山積みで売られていました。
さて、モロッコの食べ物はいかがだったでしょうか?
タジンの用意も大変なのに、子育てや小さい子のお迎えなど、
お母さんたちは本当に大忙しの働き者。
なのに、カフェではお茶もゆっくり飲めないなんて、
イスラム圏では仕方がないのですが、、、。
所変われば、食文化も変わるので、
食いしん坊の私は、とても興味深かったです。
次回こそ、最終回。
いよいよ旅の最終地点まで。
シュクラン! ありがとうございました。