世界遺産アカデミー・世界遺産クラブ共催 『キューバ大使館 特別セミナー』レポート
3月23日(金)に「キューバ大使館 特別セミナー」が開催され、多くの方が参加されました。
実際に参加されたWHA正会員・中田博之さんからのレポートをご紹介します。
『キューバ大使館 特別セミナー』レポート
2012年3月23日(金)、西麻布にある中南米諸国の大使館が入っているサロン・ラティノアメリカーノにて
キューバ大使館のご協力により「キューバ大使館特別セミナー」が開催されました。
暦の上ではもう春ですが、まだまだ肌寒く雨の降る中、多くの方が参加されていました。
前半は、キューバ大使館の事務次官の方のスペイン語による解説で
スライドを観ながらキューバの世界遺産を紹介していただきました。
現在、キューバには7つの文化遺産と2つの自然遺産が登録されています。
キューバは16世紀にスペインに征服されると砂糖やタバコ産業で発展し、
それらを栽培するための奴隷貿易を中心として栄えました。
その繁栄により海賊や西欧列強の標的となったため、
数多くの要塞を築き、18~19世紀にかけてカリブ海における貿易の中継都市となりました。
その面影が残っているのが首都ハバナで、①「オールド・ハバナとその要塞群」(文化遺産/1982年)として
世界遺産に登録されています。ここは当時築かれたスペイン・バロック様式の建物が多く見られ、
当時と現代の移り変わりを比較しながら歴史と文化を説明していただきました。
また、ハバナでは、ホテル、レストランの収益で街の修繕を行うなど組織的な取り組みがなされているそうです。
ちなみにハバナ市内には、かつてヘミングウェイが滞在したホテルがあり、
今でも手紙やタイプライターが残されています。
キューバの文化遺産は、かつてスペインの植民都市だった箇所が多く、壺で有名な ②「カマグエイの歴史地区」
(文化遺産/2008年)、18~19世紀に砂糖生産の拠点として栄え、街全体が歴史を残す
③「トリニダードとロス・インヘニオス渓谷」(文化遺産/1988年)、無敵艦隊が破れたのをきっかけに、
フェリペ2世が防衛力を高めるために築いた要塞で堅牢さと機能美を兼ね備える
④「サンティアゴ・デ・クーバのサン・ペドロ・デ・ラ・ロカ城」(文化遺産/1997年)などがあります。
また、フランス人移民の発想でつくられた地区 ⑤「シエンフエゴスの都市歴史地区」(文化遺産/2005年)も
世界遺産に登録されています。
そして、キューバの産業に葉巻とコーヒーは欠かせないもので、その産地も世界遺産になっています。
最高品質のタバコ産地である ⑥「ビニャーレス渓谷」(文化遺産/1999年)とキューバで初めてのコーヒー農園
⑦「キューバ南東部のコーヒー農園発祥地の景観」(文化遺産/2000年)です。水晶が採れる山岳地帯で
栽培されていることからその名が付いた「クリスタルマウンテン」は、キューバで最も高級なコーヒー豆です。
また、キューバはカリブ海に囲まれた自然豊かな国でもあり、自然遺産も2件あります。
ひとつは多数の固有種が生息し、石灰岩の海岸段丘が完全な形で残る⑧「グランマ号上陸記念国立公園」
(自然遺産/1999年)。ここはメキシコに亡命していたカストロがヨット「グランマ号」で上陸したことで知られています。
もうひとつは、独特な生態系を有する特異な環境の公園
⑨「アレハンドロ・デ・フンボルト国立公園」(自然遺産/2001年)です。
これまでキューバの世界遺産は、名前と特長を検定試験の勉強で学んだだけでしたが、
このセミナーで歴史、背景、文化等を深く知ることができ、大変勉強になりました。
最後にキューバ大使館のホセ・アグスティン・フェルナンデス・デ・コシオ・ロドリゲス閣下による挨拶があり、
「自然が与えてくれた遺産は人間性を豊かにし、世界遺産によってキューバ国民も自分自身をより深く知れる」と
お話しされ、日本の世界遺産もキューバに劣らず素晴らしいものなので、あらためて見直したいと思いました。
続いて、世界遺産アカデミーの愛知和男会長からは、「キューバと日本は古くから交流があります。
1614年キューバを訪問した最初の日本人として知られる支倉常長(はせくら・つねなが)のゆかりの地である
仙台を訪れたい」とお話しいただきました。
スライド観賞の後は、楽しい夕食会に続きました。
まずは、ラム酒とライムジュースがベースのカクテル「モヒート」で乾杯!
豆やオリーブを使った料理が中心に並んでおり、見た目にも一気に食欲をそそられました。
キューバの食文化は大航海時代になって到来したスペイン、奴隷として連れて来られたアフリカ人の食文化の
影響を受けていますが、スパイシーでもなく味も日本人好みで、参加者の方たちも楽しそうでした。
食を十分に満喫した後は、キューバ出身のミュージシャンが登場し、
いかにもラテン音楽らしい陽気でノリのいい曲と歌声を披露してくれました。
そのうち、曲に合わせたダンスも始まり徐々にテンションも上がってくると、最後にはお酒も入っているせいもあって、
自然と参加者も踊りに加わり、会場一体となって盛り上がりました!
朝まで踊り続ける勢い(?)でしたが、世界遺産クラブの菅谷氏により締めの挨拶をいただき、
キューバを身近に感じられ、充実したひとときを過ごすことができました。
最後に…
キューバ革命後、米国による長年の経済封鎖で何度も破綻寸前に追い込まれ、
またキューバ経済を支えていたソ連などの社会主義国も崩壊しましたが、それでもキューバは、
医療費は無料であり、自給率も高く、人種差別もなく、国内に悲壮感がありません。
それは、直面した困難をバネに危機感を持って意識改革した結果であり、日本も見習うところがあると思います。
同じ島国であり、日本との交流の歴史も古く、野球・柔道・バレーなどのスポーツも盛んで、
これだけの距離があってもどこか共通点のあるキューバと日本。美しい自然と美味しい料理、
人柄・国柄に魅力を惹かれ、人生を豊かに感じられるキューバをすぐにでも訪れたくなりました。
今回、キューバの世界遺産に深く触れることができ、
貴重な交流の時間を過ごせたこのような機会を用意してくださった関係者の皆様方には厚く御礼申し上げます。
(文責・写真/WHA正会員・中田博之)