■ 研究員ブログ⑤ ■ 2010年、10月、COP10
雨が次の季節を連れてくる、とはよく言いますが、
今度の雨は、次の次の季節を連れてきてしまったような、
どこか強引な肌寒さがあります。
さて、明日から10月。
10月といえば、僕の故郷でもある名古屋で、
COP10(生物多様性条約 第10回締約国会議)が開催されます。
「国連地球生きもの会議」とも呼ばれている、あれです。
故郷名古屋で COP10 がある! とワクワクしているものの、
実は僕は自然遺産にとんと疎いので、
COP10 と聞いてもあまりピンとこないのです。
果たしてブログのテーマに選んでよいものか、とも思いましたが、
無知をさらけ出すのを承知で、考えたことを書きたいと思います。
現在、192カ国とEU(欧州連合)が締約している生物多様性条約は、
ユネスコの進めているMAB計画(人間と生物圏計画)と
似ているところがあります。
それは共に、人類と環境の接点に注目し、
そこで起こりつつある問題の解決を目指している点です。
そのため、生物多様性と経済活動を機能的に結びつけるための、
科学的な研究やモニタリングが行われています。
しかし、生物多様性条約はより明確に経済開発に重心を置いている、という点で、
MAB計画や、それと大きく重なり合う世界遺産条約とは
立場が少し異なっています。
つまり生物多様性条約では、
持続的な社会経済開発に不可欠なものとして、
経済活動の過程で手を加えながらでも
生物の多様性を守ってゆくというコトです。
例えば、生物多様性条約の推進方法に
「生物多様性オフセット」というものがあります。
これは、土地開発や森林開拓などで失われた生態系を、
別の場所で保全・復元して、生態系の損失を差し引きゼロにする、
という取り組みです。
これ自体は素晴らしい取り組みだと思いますが、
鉱山開発して操業する周辺に保護ゾーンが作られ、
そこに動物や昆虫が移り住んで、これまでどおりに生きてゆく、
というコトが本当に可能なのかしらん、と、
無知な僕は思ってしまうのです。
そして経済的な視点が優先されるため、
「生物多様性オフセット」が金融商品として売買されたり、
2020年までの生態系保全目標「名古屋ターゲット」の採択が難航したり、
アメリカ合衆国が知的所有権の問題もあり条約自体を批准しないなど、
本来の「生物の多様性を守る」という理念から離れつつある気もします。
とはいえ、特定の地域や種だけではなく、
生物の複雑な生態系や生息環境を保全して生物多様性を守る、
という包括的な条約があることはとてもよろしい。
生物多様性条約が採択されたのは、
日本が世界遺産条約の締約国入りしたのと同じ1992年です。
日本が入ることで、西欧的な石の文化のみではない、
文化の多様性が守られるようになったのと同じ年に、
生物の多様性が守られるようになったのは、感慨深いものがあります。
名古屋では河村たかし市長が、
なんとかせなかん、と頑張っておりますが、
ぜひ COP10 の「名古屋ターゲット」の採択も
何とかしてもらいたいものです。