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■ 研究員ブログ32 ■ 世界に胸を張ろう!

今日から京都で、世界遺産条約採択40周年記念最終会合が始まりました。

ここ数年、日本では世界遺産の話題に事欠かない気がします。
2011年には『小笠原諸島』と『平泉』が世界遺産リストに記載され、
2012年には世界中で開催されてきた世界遺産条約の採択40周年を記念する行事の
総仕上げの最終会合が京都で開催され、
2013年には日本の暫定リストの中から『富士山』と『武家の古都・鎌倉』が
世界遺産委員会で審議される予定で、
2014年には『富岡製糸場と絹産業遺産群』が同じく審議される予定です。

世界遺産の動きはぜひ注目してみてください。

ところで、現在の日本の暫定リスト記載の遺産数は「12件」である、
と多くの人が「知っている」と思います。
文化庁のHPにも12件が記載されています。

しかしユネスコの世界遺産センター(WHC)のHPを見ると、
その数が違っています。

WHC記載の数は「13件」。
その1件は何かというと、
『平泉-仏国土(浄土)を表す建築・庭園及び考古学的遺跡群』なのです。
これちょっと不思議に思いますよね。

なぜ『平泉』が暫定リストに記載されているかというと、
「柳之御所遺跡」や「骨寺村荘園遺跡」などの追加登録を目指しているためです。

2010年に『石見銀山遺跡とその文化的景観』で登録範囲が拡大したような
「登録範囲の軽微な変更」の場合は暫定リストに記載されることはないのですが、
今回の『平泉』のように遺産が新たに追加されて、
すでに登録されている資産の境界線に重大な変更がある場合は、
新規登録推薦と同様の手順で、暫定リストに記載してから推薦を行う必要があります。

そのため、『平泉』が再び暫定リストに記載されているのです。

その日本の暫定リストの特徴は、13件全てが「文化遺産」である、という点です。
これは2014年の世界遺産委員会で審議される遺産からは
文化遺産が1件までしか推薦することが出来ないことを考えると、
劇的に日本の世界遺産数が増えることはなさそうです。
……別に、劇的に増えなくていいのですが。

世界の世界遺産保有数ランキングでトップはイタリア共和国の47件。
それ以降は、スペイン44件、中華人民共和国43件、と続きます。

これらの三カ国の暫定リストを見ると、
イタリアが41件、スペインが24件、中国が50件記載されています。

その内訳を見ると面白いことが解ります。

ここでポイントになるのが自然遺産と複合遺産の数です。
先述したように、文化遺産の推薦数が抑えられることを考えると、
自然遺産や複合遺産が多く暫定リストに含まれている国から
今後も世界遺産が増えていきそうな気がします。

上位三カ国の暫定リストにおける自然遺産と複合遺産を合わせた割合は、
イタリアが約29.3%、スペインが約16.7%、中国が42%。

近い将来、中国が世界遺産保有数で世界一になるかもしれません。
あれだけの国土と歴史がある国なので、不思議ではないと思います。

日本が世界遺産条約の受諾書をユネスコ事務局長に寄託したのは1992年と遅いですが、
世界遺産条約と日本は強く関係しており、
現在では世界遺産基金への拠出割合は世界一です。
……これまで世界一だったアメリカ合衆国が
パレスチナ(PLO)のユネスコ加盟問題で拠出金を凍結しているためですが。

世界遺産総数962件のうち、日本の世界遺産が占める割合は約1.7%。
一方で、世界遺産基金への拠出割合は約12%なので、
日本の世界遺産条約履行に対する貢献がよくわかります。
それ以外でも、日本の研究者や民間の機関が世界中の遺産の保全に携わっており、
世界遺産数がそれほど多くなくても、日本は世界遺産大国(?)であると
世界に対して胸を張ってよいと思っています。

そんな日本で開かれている40周年記念会合の最終日に出される「京都ビジョン」が
どんな内容になるのか、楽しみにしています。