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■ 研究員ブログ78 ■ 今こそ世界遺産と向き合うべき~宗像・沖ノ島と関連遺産群の推薦に向けて

minipetit

夏真っ盛りの暑い日が続いていますね。
陽射しと熱気にぐったりとしますが、
この暑さがないと寂しいんだろうな、とも思います。

今回の世界遺産委員会が終わって、
これまで世界遺産に関心があった人だけでなく、
世界遺産に関心のない人や、むしろ否定的であった人まで、
世界遺産とは何なのかについて興味をもったように感じます。

先日の文化庁文化審議会にて、
2017年の世界遺産委員会に向けて日本から推薦される遺産が
「『神宿る島』宗像・沖ノ島と関連遺産群」に決まりました。

驚いたのは、文化審議会での決定が様々なメディアで取り上げられ、
翌朝のテレビ番組では九州大学の西谷先生のインタヴュまで入れて
大々的に取り扱われていたことです。

文化審議科での決定がここまで大きく注目を集めた例を
僕は知りません。
富士山の時ですら、こんなに話題にはなりませんでした。

正式な推薦書を提出するまで、まだまだ段階があります。
文化審議会での決定の後、9月に関係省庁連絡会議があり、
そこで決まれば、正式推薦書が提出される直前の1月末の閣議で了承され、
2月1日までに推薦書を提出して、初めて2017年の世界遺産登録候補になるのです。

今回は文化審議会の決定がそのまま行くと思いますが、
一昨年の文化審議会で推薦が決まった「長崎のキリスト教関連遺産」は
9月の関係省庁連絡会議で内閣官房推薦の「明治日本の産業革命遺産」と競合し、
最終的には官房長官の判断で「長崎のキリスト教関連遺産」は先送りになりました。

今回だって、適用する法律を変えて
別の遺産を内閣官房が推薦することだってあり得ます。
……まぁ、まずないですが。

「明治日本の産業革命遺産」を内閣官房が推薦したことで、
世界遺産に推薦するルールというものが、
文化行政的には曖昧になったというか、
確たるルールがないことが露呈したと思います。

これまで文化財の保護・保存などを担当していた文化庁の決定が、
あっさりと否定されたわけですから。

産業遺産やその景観を守ることには賛成ですし、
稼働中の資産を保護するための苦肉の策であったことは理解できます。

ただ今後は、文化庁、経済産業省、内閣官房、環境省、林野庁など、
縦割りで考えるのではなく、
「世界遺産」というひとつの枠組みを
国家としてどのように考え行動していくのか、
日本国の文化行政としてしっかり考える必要があると思います。

省庁横断型の機関を設置するのも考えてよいのではないでしょうか。
日本が観光立国を目指しているのであれば、
「世界遺産」だって非常に有力な柱のひとつになるのだし。

そして僕たちも、世界遺産が増えたとか、地域振興になる、
といった視点だけでなく、
世界遺産をもつということはどういうことなのか、
その文化財を何のために世界遺産にするのか、
世界遺産を守るためには何をすべきなのか、
ということを考える段階に来ているのだと思います。

考えてから観光に行ったり、地域興しにつなげたりすればよいのです。

さまざまな人が世界遺産に興味をもっている今は
人々の意識を変える大きなチャンスです。
世界遺産への理解がもっともっと深まればよいですね。