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■ 研究員ブログ92 ■ 快適さはどこまで追求すべきか。WWFの報告書より

2016.04.08

今年も桜が美しく咲きました。
今朝はマンションのエントランスから
いくひらもの桜の花びらが舞い落ちるのを、
思わず見入ってしまいました。

ルーティンのように目の前の仕事をこなして慌しくしていると、
日々の変化を感じることなく時は過ぎていきますが、
自然はきちんと季節ごとに変化して
一年の時の流れを感じているのだなと実感します。
人間は自然に季節の移り変わりを教えてもらっているというか。

人間は自然から多くの恩恵を受けています。
季節の移り変わりを知るだけでなく、
食料や水、住宅材、医薬品の原料など、
実質的な生きる糧を自然に依存しています。

つまり、自然環境を破壊することは、
自分自身の首を絞めているということなのです。

先日、世界自然保護基金(WWF)が出した報告書
「Protecting People Through Nature」によると、
世界遺産に登録されている自然遺産197件と複合遺産32件の合計229件のうち、
半数にあたる114件が、
石油や天然ガスの探査、採鉱、不法伐採などの産業活動の脅威に
晒されているとしています。

114件に含まれているのは、昨年危機遺産リスト入りも審議された
オーストラリアの『グレート・バリア・リーフ』のほか、
カナダの『カナディアン・ロッキー山脈国立公園群』や、
ペルーの『マチュ・ピチュ』、ロシアの『バイカル湖』など、
危機遺産リストに記載されていない遺産がほとんどです。

日本からは『知床』が、持続不可能な水利用の状態にあるとして、
「ダム/水利管理」の脅威で、唯一含まれています。

WWFでは、これらの世界遺産から恩恵を受けている人々は、
ポルトガルの人口よりも多い1,100万人以上にのぼると試算しており、
そうした人々が地球規模の「有害な」産業活動から
ネガティヴな影響を受けているとしているのです。

これは地球温暖化の問題とも似ていますが、
直接的に自分の生活に関係ないと思っていても、
自分の生活に「便利さ」や「快適さ」をもたらしている産業活動のいくつかが、
自分たちの生活の質を悪化させる原因となっているだけでなく、
別の場所にいる人々の生活を脅かしているということです。

エアコンの効いた快適な室内や、いつでも開いているスーパー、
ひとつひとつ綺麗にラッピングされている野菜やお菓子など、
どれも生活の質を向上させているのですが、
本当にそこまでする必要があるのか考えるべきだと思います。

東京という大都会に暮らして、
そうした快適さの恩恵を最も受けている僕が、
「生活の質を抑えろ」と言うことに、
自分自身、大きな疑問を感じもしますが。

資源利用の地域格差の是正や、
「生活の質」そのものの再定義など、
世界遺産を通して考えていきたいと思います。
グローバルな視点を目指して。

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