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●マイスターのささやき NO.4 森羅万象・世界遺産 (2)プリトヴィツェ

森羅万象・世界遺産 中欧の旅 スロベニアとクロアチア

マイスターの三芳けんじと申します。5月にスロベニアとクロアチアを旅しましたので、

第二回は、クロアチアの自然遺産を御紹介させていただきます。

●(2)プリトヴィツェ湖群国立公園●

5月だというのに、世界遺産・プリトヴィツェ湖群国立公園近くのホテルの朝は寒い。出発時は小雨模様でセーター、雨具も用意した。この国立公園は、クロアチア北西部のクヴァルネル地方にある、標高900-1600mに広がるプリトヴィツェ台地にあり、この地方に特有な石灰華が作り出す階段状の湖と滝は、周囲の森林群と相まって、世界でも稀な景観として知られている。石灰華はトラバーチンとも呼ばれ、カルストの川や小川から流れる水が、境界、河口、および他の地形を築き、炭酸カルシウムの沈殿により作り出された多孔質石灰岩である(クロアチア・ポルトヴィツェ国立公園案内書より引用)。プリトヴィツェ湖群は、海抜637mにあるプロシュチャンスコ湖を含む比較的大きな上湖群と、峡谷にあり、小さな湖が多い小湖群にわかれている。一番下の湖は標高503mで、そこからサスタヴツィ瀑布が落ちている。標高差、134m、長さ約2kmの間に自然現象だけで形成された16の湖とそれらを結ぶ92の滝が集中している。

このような石灰岩地質がなす絶景は、1979年に世界遺産に登録され、中国の九寨溝、トルコのパムッカレとともに世界の宝物として保護されている。公園に入ると、いきなりサスタヴツィ瀑布の迫力に圧倒される。大きな渓谷になっていて、右は、眼前にある石灰岩質の切り立った崖から、数本の滝が、競うかのように一直線に落ち、それらが集まって水煙となり、その下は簿やけてはっきりしない。遥か左には、数個の湖が階段状になって見え、それぞれが小さな無数の滝でつながり、滝は動いて白く見え、湖は青く、はたまたエメラルドグリーンに静まり返る。湖は眼下で一気に動き、激しい滝となって滝壺に消える。

谷底には、一筋の川が白く、幾分光って見える。此処を源とした流れは、コラナ川となり、遠くアドリア海に注いでいるという。この頃には雨もあがり、周りも明るくなり、薄日もさして来た。雨で湿った散策路を滝の飛沫も感じながら注意して降りる。ブナやモミなどの樹林に囲まれた湖面は輝きを増して、更に青く、手を入れると水は冷たく、透き通っていて底まで見える。湖にはトラバーチンで出来た自然の堰があって、5m程の滝で上下に分けられている。堰に沿って幅3m程の木道が出来ていて対岸に渡れる。中央に立って上流を見ると、それぞれの滝で区切られた数個の湖が階段状に見える、近くのものほど、湖岸の木々の緑がはっきりし、湖面は鏡のごとく、木々や山々が逆さになって写り、その真ん中に白い雲が浮かぶ。静かな湖は足元で急に流れを速め、小さな滝となって落ち、小湖群にある最後の湖となる。その先はサスタヴツィ瀑布で、谷底まで激しく落ちている。

巨大な滝に感動した後は、湖岸の散策路に沿って上湖群を目指す。途中にはたくさんの草花が咲いている。よく見ると湖の浅瀬にも、水草、水藻に混ざって黄色や紫の花が咲いており、水は澄んでいて小魚がたくさん泳いでいる。其処では自然が守られ、多くの命が護られている。保護されているのは生き物だけではない。木板で作られた遊歩道は来訪者の散策の為ばかりではなく、大切な湖群の石灰華が踏まれないようにも意図されている。此れは世界遺産の維持のため、観光と自然保護を考えたとき、人類共通の財産として次の世代に残すための一つの手法でもある。上湖群の一番下にあるコジャック湖岸の散策路は、モミなどの針葉樹に混ざって、何故か桜の木が多い。ガイドから、「春は桜がきれいです」との説明を受けたが、桜は日本と思っていたため、あまりピンとこない。このトラバーチンの景色に桜は似合わないと思ったが、見てみたい気もする。

コジャック湖は下湖群に比べて大きく、渡しと遊覧のため、電動ボートがある。屋根が付いていて、70-80人は乗れる。船から周りを見ると、湖岸には彼方此方に滝があり、周りと見事に調和している。やはり、白い滝と青い湖の背景にはブナやモミなどの樹林が似合いそうである。