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● マイスターのささやき:大震災ボランティア活動と世界遺産の共通理念

世界遺産の語り部 志水武雄

世界遺産を語り、伝える時、何が聞く人に感銘を与えるかと常々考え、その遺産の背後にある赤裸々な人間の生き様を訴えて来ました。誰がそれを造り、そこに住み、どのような目的で造ったのか、それに携わった人達はどのように、何を大切に生活をしていたのかという生き様です。

今回の東日本大震災の被災地に、若者たちが在日外国人も交え、ボランティアとして続々と被災地へ駆けつけました。国、人種、言語、習慣、民族を超え、人間にとって「大切なもの」–かけがいのない命、家族、生活、故郷など–を守り、残していくために、お互いに思いやり、助け合い、協力し合っていく姿に大きな感動を呼び起こしています。

この「大切なもの」を「人類の共通な宝物」としての世界遺産に置き換えるならば、今日被災地で目の当たりにして感動を呼ぶ熱い姿に、私達がまさに世界遺産の保全と継承の実現を目指している姿に重なる思いがします。

インドネシア独立を求めて活躍した女性活動家カルティニの言葉が思い出されます。先ず、多民族、多文化の祖国の現状を見て「自国の庶民に息づく文化の美しさに気づいていく精神」の大切さを説き、その人達が「また交流することにより異なる国、人種、民族、慣習の人々に自分と同じ考えを見出して喜ぶ」、その結果「ある民族の優れたものを交流させれば、その交流によってよりよく素晴らしい慣習が生じる」と述べています。

また、被災地の方々が、じっと悲しみに耐え、時には笑顔を見せ、復興へ向け一歩一歩前進している姿は、海外へ報道され、日本人の持つ美徳への賞賛の声となって大きな反響を呼んでいます。 震災1か月以上を過ぎた現在でも、賞賛の声は尚一層大きくなっています。

認定講師として若い学生さんと接触する機会が何度かあり、そのつどきらきらと目を輝かせ世界遺産の話に耳を傾ける姿に感動しています。 場所と時代を超えそこに生きる人間の営みが世界遺産を通して親近感と共感を与えていると実感を覚える瞬間です。

被災地の若者たちのボランティア活動から、世界遺産の理念をどのように伝えたら良いかを触発され、私なりに考えを述べてみました。