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● マイスターのささやき:姫路城改修施設見学レポート

世界遺産検定マイスター 豊崎美紀

マイスターの豊崎です。この五月に姫路城へ行ってきましたので、その様子をお伝えしたいとおもいます。

皆さんもご承知のように、いま姫路城は、平成の大改修の真っ最中で、大天守の周りには工事の足場が組まれていて、カバーで覆われている状態です。当日雨が降っていましたので、模様が見えにくいかもしれませんが、外観に大天守の絵が描かれていて、遠くからみると大きなビルディングのようでした。

 

その内部が、修理を見学できる施設『天空の白鷺』として、現在開館しています。入館料200円を払えば誰でも入場できますが、事前のインターネット予約が必要です。私も予約して行きましたので、雨でしたが別日という訳にもいかず、結構降られながら見て回りました。

建物は、9階建て。天守南側から入ります。内部は、1階が展示スペースになっており、そこからエレベーターで一気に8階まで上がります。これが予想以上にテンションが上がります。何しろガラス張りのエレベーターのすぐ外に天守台の石垣、そして天守五層分の側面をびっくりするほど真近に見られるのですから、もう、この時点で入館料のもとが取れているどころか、おつりをたくさんいただいている感覚です。

 

 

展示の模型を撮ってきましたので、展示室7階8階のガラス張り越しの写真と、それぞれ当てはめて見てください。

8階では最上層の屋根瓦の葺き直し修理の様子を、7階では四層の屋根がまだ土居葺きという下地の過程でした。五層の壁漆喰もここから見ることができます。見学を一般に開放しているのは、この二階分だけです。この日は他の階の補修工事をされていた様子で、音はしていたのですが、実際に職人さんが補修作業をしている姿を見ることはできませんでした。でもラッキーなことに、この翌週には取付けられる予定だった平成の鯱瓦が、スタンバイ状態で鎮座しているところを写真におさめることができました。この貴重なショットもアップしておきます。

 

瓦といえば、今回の大修理の内容としては、屋根瓦の葺き直しと漆喰壁の塗り直しが中心ということですが、その屋根瓦の総数は8万枚以上。すべて手作業で外して、再利用が可能か調べて、葺き直すという気が遠くなるような作業なのだそうです。その一部が、ちょうど訪れた日を挟んで一ヶ月期間限定で展示してあったので、これも写真に収めてきました。立体的な形状の鬼瓦は大きさが70×40センチもあるみごとなもので、池田家の家紋、アゲハチョウの文様です。現代にも通用するようなモダンなデザインですね。

瓦を葺き直す作業工程の実物大モデルの展示がわかりやすく好印象でした。他にも、1階の展示ブースで「姫路城の改修の意義」の上映があり、どうして姫路城を後世に守り伝えなければならないのかを5分にまとめてあり、展示全般をみて、上手に伝えていることにも感心しました。これだけの資金を動かすビッグプロジエクトですから、市民の賛同が最重要だったのでしょう。姫路の皆さんの、我が街の宝を守っていくんだという心意気を感じました。姫路城は、長い年月をたくさんの人々に守られて、幸せですね。私のお国自慢は名古屋城になるのですが、戦災で消失して創建時の木造構造が失われてしまったのは本当に残念です。

江戸期の修復の際に、徳川幕府に提出した補修申請書にあたる、図面と予算取りの資料の展示を興味深く拝見しながら、映画『武士の家計簿』を思い出していました。詳細に勘定などを書き残す、こういった几帳面さは、日本人の美徳の一つですね。そのおかげで、過去の城の普請の顛末がしっかり残っている。記録もれっきとした文化なのだと体感した次第です。

天守以外の写真では、狭間から覗いた風景を観てください。ここから、矢とか鉄砲でねらったのだなと、熱心に覗き込んでいる外国からのお客様の写真も付けておきます。

 

姫路城の平成の大改修も、あと二年あまりで終了します。国宝であり世界遺産である貴重な文化財の大規模な改修を、本当に真近で観られるチャンスです。是非、世界遺産アカデミー会員の皆様や世界遺産検定受検者の皆様へ改修施設の見学をおすすめします。姫路駅から徒歩で行けます。
施設入館料の他に姫路城の入場料も必要ですが、隣の好古園との共通入場券がお得です。こちらのお庭の散策もとても楽しめました。雨に濡れた新緑が美しかったです。