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● マイスターのささやき:沖縄の世界遺産から(前編)

世界遺産検定マイスター 豊崎美紀

約一年ぶりに投稿させてもらいます。マイスターの豊崎です。
先月(3月)に沖縄へ行ってまいりましたので、その報告をしたいと思います。

まずは、本島南部の斎場御嶽(せいふぁうたき)。
ここは琉球王国内の聖地の中でも最高位とされた場所。内地で言えば伊勢神宮。
最近はパワースポットとして大注目されていて、沖縄の観光地の中では人気急上昇との情報は得ていたのですが、私の予想を遥かに超える多くのカップルや若い女子たちが詰めかけていました。その混雑ぶりは今回行った先でNo.1。駐車場に入るのに20分以上はかかります。

入り口から歩いてまもなく結構な急斜面。これを上りきると斎場御嶽の六つの神域が点在するエリア<写真01>に入ります。下界とは空気が違う?そう確かに、神聖な気持ちになってしまうロケーションです。斎場御嶽のシンボル「三庫理(さんぐーい)」<02>と、その東側の遥拝所から海の彼方に見える久高島<03>。ここはニライカナイ信仰のルーツ。祭祀を女性のみで執り行う風習から近年まで男子禁制でした。それと、一番奥にある神域「寄満(ゆいんち)」<04>とその解説の陶板<05>。この案内板のイラストが素朴で好印象でした。色味も周りの景観を邪魔しない淡い色合い。こういった配慮、というか美意識が、ここの遺産価値をより高めていると感じました。

別日に那覇市中心部を観光して回りました。まずは識名園へ。
こちらの廻遊式庭園が素晴らしいのです。池の真ん中の六角堂<06>は中国の様式を模して建てられており、全体の造園の形式は琉球スタイル。その調和が見事。中国からのお客様の接待に使われた識名園の役割が良く見て取れます。池の奥には舟揚場<07>もあります。戦災被害にあった「御殿(うどぅん)」<08>の内部も、細部まで神経の行き届いた復元がなされていて、琉球王家の往時を理解するにはとても良い史跡だと思うのですが、観覧者は寂しいくらい少なかったです。地味だから?でしょうか。植栽も素晴らしいのでお花<09>の好きな方にもおすすめです。

次に訪れた首里城公園<10>は打って変わって観光客が多く来場されていました。
こちらは、テンペストブーム後に初めて再訪しました。ご存じない方のために説明します。テンペストは琉球王朝末期を描いた小説。NHKBSにてドラマ化され、世界遺産の首里城を始め構成物件の多くがロケ地になっています。この撮影にも使われていた正殿<11>の、朱塗りの修復ぶりはあっぱれと感嘆しました。映像では少し赤みがきついのではと懸念していましたが、実物は落ち着いて品のある朱色に塗られていて、木彫の龍に施した金色とのマッチングも良く、美しさが引き立っていました。

写真は正殿内の「大庫理(うふぐーい)」<12>。王族の間なのですが、斎場御嶽の神域の一つと同じ名前が付けられているのです。斎場御嶽の写真で紹介した神域「三庫理」や「寄満」という名前の部屋もあります。斎場御嶽と首里城の関係性を示すトリビアですね。これらの有料ゾーンは展示室なども見応えがありますし、疲れたら琉球古来のお菓子とさんぴん茶<13>がいただける茶室<14>もあるので満足度は高いです。

もう一つの世界遺産である園比屋武御嶽石門(そのひやんうたきいしもん)<15>は公園内無料ゾーンにあります。こちらの門の裏側に広がる森<16>と石門を総称して「園比屋武御嶽」。これらの聖なる森の一部が、奉神門前にある「首里森御嶽」(すいむいうたき)<17>に表現されています。ここも古くからの拝所の一つです。古い樹木がなんとも良い味を出していると思いませんか?

最後に、絶対に外せない玉陵(たまうどぅん)へも足を伸ばしました。
こちらも、首里城のすぐ隣という好立地としては、王家の陵墓という建造物<18>の性格からか、観光客はまばら、閑古鳥が鳴いていたのは残念。獅子の石像<19>3体が静かにお墓を守っていました。来月5/5(日)こどもの日は、この地味な方の世界遺産、玉陵と識名園が中学生以下の観覧料無料です!(詳しくは那覇市のサイトへ)。連休中に沖縄へご旅行される方は、那覇市へ行かれたら是非、世界遺産登録の文化財を、もれなく訪れて見てください。全部見ることで琉球王家の暮らしや宗教観がより深く理解できるように思います。

世界遺産ではありませんが、那覇市内でもう一カ所おすすめの場所をお教えします。沖縄県立博物館・美術館です。外観<20>をグスクに見立てたような、まるで城壁に囲まれたみたいな建物の構造になっています。光が差し込む内部<21>のデザインも素敵です。訪れてびっくりしたのが、『スタジオジブリ・レイアウト展』<22>を開催していたこと。2008年度から全国巡回していた大規模な企画展の最終会場がここ沖縄だったのです。ジブリフリークの私には願ったり叶ったり。心から楽しんで鑑賞してまいりました。この展覧会は5/6まで。それまでに沖縄へ行かれるご予定の方、お見逃しなく!です。もちろん、常設展の内容も一級品で、ゆっくり観て廻れば、琉球王国の文化・歴史のみならず沖縄の自然史・伝統文化を多く学ぶことができます。

長くなりましたので今回はこの辺で。次回予告。ラムサール条約に登録された湿原のリポートと、改修中だった文化財の報告をする予定です。ここまで読んで下さった方に感謝しつつ。See you soon !