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● マイスターのささやき:沖縄の世界遺産から(後編)

マイスターのささやき マイスターのささやき   タグ:日本 
(2014-12-12更新/ WHA 秘書

世界遺産検定マイスター 豊崎美紀

■世界遺産と改修工事

世界遺産に限らず、訪れた史跡・文化財などが改修中だった、なんてこと、皆さん一度は経験されているのではないでしょうか。観光地評価の口コミサイト等に「入場料を取っているのにいつも工事ばかりでけしからん!」という類いの書き込みを見ることもあります。ここでは、「補修なくして文化財を残すことはできないので、そこはどうぞご理解を」というお話をしたいと思います。

   

先月訪れた首里城公園の入り口にある守礼門。二千円札(最近は見かけないですが)に載っていて有名なので、一番人気の撮影スポットです。シートに覆われた工事中の姿<写真01>に、記念写真を楽しみにしていたお客様が落胆されていました。今回は虫食いが全体的に見られ構造的に危険なのが理由の補修工事。今年3月末で終了しましたので、今は従来の姿を見ることができます。厳密に言えば世界遺産登録は首里城跡(基礎や残存した城壁)なのですが、そこは殆どの方が建物も世界遺産と思っておられます。私感ですが、私は復元された木造建物群の一部は世界遺産に値すると考えています。復元に使用された資材は、木材はもとより庭園の樹木や石にまでオリジナルに近いものを集め、戦前の写真などを手がかりに精巧に復元されているからです。今後も復元や補修工事は続けられますが、その結果、戦争で破壊された首里城の元の姿が再現されるのであれば、味気ない足場やシートも納得できませんか?

   

昨年5月に訪れた厳島神社の大鳥居も改修工事をしていました。<写真02>どれだけ大きな鳥居なのか、舟との対比でおわかりになるでしょう。こちらも厳島神社のシンボルのような存在。昨年はNHK大河ドラマ平清盛ブームで宮島が沈むかと思うぐらいの観光客が押し寄せていましたから、がっかりされておられる方々を多くお見かけしました。でも厳島神社の大鳥居は海上に立っているという特にユニークな建造物です。ずっと立ち続けてもらう為の足回りの補修は、陸上の構造物よりも頻繁なチェックが必要とされます。

認定講師として学校等で世界遺産の講義をさせてもらうとき、必ず受講者の方々に申し上げるのが、世界遺産は登録されてからが大事!というフレーズ。これを必ず授業の中でお話しています。遺産を後世に正しく残すために、保護・保全活動は欠かせない作業なのです。どうしても見たい文化財があって観光地を訪れる際には、現地の観光HP等で工期を下調べしてから出向かれると良いかも知れないですね。

        

もう一件、広島原爆ドームを例に挙げます。ここは、戦禍の姿そのままを留めることが使命の遺産ですので、被爆によって壊れた壁や曲がった鉄骨も直すことなく保存されています。しかし、建物全体の崩れの危険回避の為に、内壁の保存措置として補強鉄骨が設置されており、そのことは案内板にも説明書きがあります。<写真03>この補修部分を見る度に感心するのは、その補強鉄骨がオリジナル部分と識別できるように敢えてわかりやすく塗ってあることです。<写真04>こういった、遺産価値に配慮した繊細な仕事に出逢うと、日本人の細やかさっていいなあとつくづく感じます。

このブログを読んで下さった方が、次に行った旅行先で文化財が補修中でも、保全活動をしてもらってご苦労様ですという気持ちになっていただけると嬉しい限りです。

■  ラムサール条約と世界遺産との関係

   

今回の沖縄旅行では本島へ行く前に宮古島へ寄りました。初めて島へ足を伸ばしましたが、海の綺麗さに驚きました。手つかずの珊瑚礁が残る海底<写真05>を見て下さい。沖縄と言えばこんな海を想像されるでしょう。しかし、近代、土地開発による表土の流れ込みで、特に本島海域のサンゴ礁は大打撃を受け社会問題になっています。離島はまだその影響が少なく済んでいる様子でした。

   

        

宮古島南西部にある与那覇湾へも行ってみました。<写真06>ここは2013年7月ラムサール条約第11回締約国会議(ルーマニア・ブカレスト)で登録されたばかりの干潟。沖縄には既に久米島・石垣島・慶良間諸島等4カ所に登録地があります。検定に向けて学習中の方、特に2級以降にはテキストにも記載が増えてくるこのラムサール条約。水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約のことです。与那覇湾は沖縄県内最大級の干潟で絶滅危惧種クロツラへラサギの飛来地でもあります。撮影した白鷺の分類はわかりませんが、実際に干潟で餌(稚魚や甲殻類)をついばみ、<写真07>岸の木々に群生する姿<写真08>も撮影してきました。これからも鳥たちの楽園であり続けて欲しいものです。

        

実は昨年、同時にラムサール条約に登録されたのが宮島。厳島神社観光に年間300万人の旅行者が訪れ、固有種ミヤジマトンボ(絶滅危惧種でもある)の生息地である湿地が観光被害にあっています。宮島は聖域弥山<写真09>が世界遺産に含まれています。厳島神社も潮が引くとこのような干潟<写真10>となりますが、ラムサール条約登録されたのは神社とは反対側の海岸です。宮島の豊かな原生林からの山水が流れ込む河川・海岸が保護地となり、陸海二重に生態系保護がなされる宮島。今後も注目していきたいスポットです。

   

屋久島もラムサール条約と世界自然遺産にダブルで登録がされています。山から見下ろす海岸線の眺め<写真11>。こちらでも二つの登録範囲は重なっておらず、それぞれに自然保護の役割が果たされれば、観光被害も含めた人の営みによる生態系への打撃を、より緩和できるのではと期待しています。

このように、保護・保全の視点から考えてみても、世界遺産には様々な側面があります。私自身もまだまだ学びの途上。学んだ知識を若い世代に伝えていけたらと願っております。

■グスク探訪ガイド

最後に沖縄情報として、グスク巡りの時短方法を簡単に書いておきます。講義に行った先で「沖縄の世界遺産が9カ所ありますけど、何日あれば全部まわれますか?」という質問をよく受けることがありますので。
私は複数回沖縄旅行をした際に分散して訪れましたが、そんなに何回も行かれない方の為に、『グスク周遊2泊3日弾丸ツアー』の提案です。移動手段が車として、このルートを取れば9カ所を三日間で全て巡ることができます。

   一日目 今帰仁城跡→座喜味城跡。(西岸に位置する群)
   二日目 斎場御嶽→中城城跡→勝連城跡。(東岸に位置する群)
   三日目 首里城跡→園比屋武御嶽石門→玉陵→識名園。(那覇市内に集中する群)

補足説明します。
一日目。午前便着が前提ですが、グスク巡りだけではもったいないので、美ら海水族館へも行きましょう。今帰仁の近所です。そして、帰りに座喜味へ。二日目の最終地の勝連もそうなのですが、入場無料でいつでも開放していますから、閉園時間を気にせず、あえて日没の夕景を狙っても良いように順番を組みました。三日目は復路便次第で時間調整できるように、ゆいレール(沖縄唯一のモノレール)でも廻れるコースです。時間に余裕があれば国際通りに寄ったりもできます。お土産は那覇空港で殆ど揃うのでご安心を。

日本の世界遺産の中で、国内なのに最も異文化・多文化を吸収できる沖縄のグスク巡り。
是非、体験なさってください。Bon Voyage!