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■ 研究員ブログ① ■ 8月6日とビキニ環礁

青空のはるか高いところから降り注ぐ光の粒子が、
突然の眠りを引き裂く目覚ましのベルのように、
今年もこの日が来たと叫んでいる。
8月6日は、いつも暑い。

広島に原爆が投下されてから、65年が経ちました。
2010年、核を巡る状況はようやく変化しつつある気がします。
その好転の気配を感じられるのがよろしいのです。

今朝の広島平和記念式典には、
原爆を投下したアメリカ合衆国から初めてルース駐日大使が参列し、
核保有国からも初参列の英国やフランス共和国だけでなく、
ロシアやパキスタン・イスラム共和国などの代表が参列しました。
潘基文国連事務総長も現役国連事務総長としては初めての参列です。

また今年、世界遺産保有国の仲間入りを果たした
マーシャル諸島共和国からも代表が参列しています。

このマーシャル諸島初の世界遺産『ビキニ環礁-核実験場となった海』は、
核の威力を伝えると同時に「人類が核の時代に入った象徴」であるとして、
今年の7/25から8/3にかけてブラジルで開催されていた第34回世界遺産委員会で、
世界遺産リストに記載されることが決まりました。

『広島平和記念碑(原爆ドーム)』と同じく、
「負の遺産」であると考えられています。

この「負の遺産」は、ユネスコによる明確な定義はありませんが、
人類が犯した過去の過ちを記憶にとどめ教訓とする遺産です。

今回の世界遺産登録によって、ビキニ環礁でのアメリカ合衆国の核実験や、
第5福竜丸の被爆問題を思い出した人も多いと思います。
若い人にとっては、初めて知る事実だったでしょう。
日本人の被爆は、広島・長崎だけではないのです。

初めて広島で核兵器が使われてから、65年という歳月が経ち、
多くの人々が核兵器の恐怖を忘れつつある中で、
バラク・オバマ アメリカ合衆国大統領が
「核のない世界」を提唱してノーベル平和賞を受賞し、
秋葉忠利 広島市長は「核戦争の危険のない世界」を求める活動が評価されて
マグサイサイ賞を受賞します。
『ビキニ環礁-核実験場となった海』の文化遺産としての世界遺産登録は、
そうした反核の流れの延長線上に配することができます。

『広島平和記念碑(原爆ドーム)』の世界遺産リスト入りが審議された時、
委員国の中で唯一反対したアメリカ合衆国が、
今回の第34回世界遺産委員会の委員国でなかったことも、
もしかしたら関係しているかもしれません。

核に関係する「負の遺産」として共通する
『広島平和記念碑(原爆ドーム)』と『ビキニ環礁-核実験場となった海』ですが、
登録基準をみると、『広島平和記念碑(原爆ドーム)』が登録基準(vi)のみなのに対し、
『ビキニ環礁-核実験場となった海』は登録基準(iv)(vi)となっています。

登録基準(iv)が含まれているのは、
67回行われたアメリカ合衆国による核実験を経て、人類が核の時代に入ったことが、
「人類の歴史上において科学技術の代表的な段階」を示し、
同時に水爆実験によってできた大きなクレーターなどが、
その「顕著な証拠を示す景観」であると評価されたためです。

『広島平和記念碑(原爆ドーム)』と比べ、
『ビキニ環礁-核実験場となった海』は「核」そのものに
より焦点が当てられているとも考えられます。
 
核開発をする国を、既に核を持った国が止めさせる、
このどこか狂った世界が変わる日がいつか必ず来ると、
今回のビキニ環礁の世界遺産リスト入りで感じました。

世界遺産は、良くも悪くも、
「平和のとりで」としての政治的メッセージ色を濃くしつつある、
と感じさせる、今回の世界遺産委員会と今日の日でした。