■ 研究員ブログ21 ■ ようこそ、世界遺産! 小笠原諸島編
最近、震災だったり原発事故だったり、
Justice is done! だったり、
どうも心がすっきりしない日々が続いていましたが、
ようやく明るいニュースが届きました。
『小笠原諸島』と『平泉-仏国土(浄土)を表す建築・庭園及び関連の考古学的遺産群』
に ICOMOS と IUCN から「記載」勧告が出ました。
これは、「記載」「情報照会」「記載延期」「不記載」の四段階の中で、
もっとも高い評価にあたります。
これで推薦取り下げなどの特別な理由がない限り、
ほぼ来月の世界遺産委員会で世界遺産登録が決定すると思います。
「世界遺産になる」ことが至高の到達点ではありませんが、
日本の自然や遺産が世界遺産登録されるのは嬉しいコトです。
今回は『小笠原諸島』のすごいところを紹介します。
小笠原諸島はよく「東洋のガラパゴス」と言われます。
僕は「○○のガラパゴス」とか「○○のシスティーナ礼拝堂」とか、
「○○のモナリザ」とか「○○のモーツァルト」とか、
そういった形容が大嫌いなのですが……。
小笠原諸島とガラパゴス諸島の共通する特徴は、
独自の進化を遂げた島嶼生態系と生物多様性です。
登録基準の(ix)と(x)に相当します。
そういった意味で「東洋のガラパゴス」という表現が
使われているコトが多い気がします。
しかし本当に『小笠原諸島』のすごいところ
……と僕が思っているところ、は、
『小笠原諸島』が日本で初めて登録基準(viii)が認められた遺産である、
という点です。
小笠原諸島はガラパゴス諸島と同じく海洋島の自然遺産で、
その中でも、海洋プレートの沈み込みにより形成された「海洋性島弧」です。
さらに、小笠原諸島は海洋性島弧の誕生から現在までの進化過程を
陸上でボニナイトとして大規模に観察できる世界唯一の場所だと言われています。
海洋性島弧が海洋プレート活動によって誕生した島だということは、
この島がいずれ「大陸になる可能性がある島」だということです。
大陸になる可能性がある……なんて、スケールが大きすぎて、
なんだかよく解りませんが、
すごそうだ! というコトだけは僕にもかろうじて解ります。
これが地球生成の歴史に関する登録基準(viii)が認められている点なのです。
小笠原諸島は今後、世界的な注目を浴びて、
生態系や生物多様性を守る闘い(?)が始まります。
「世界遺産になる」ということは、
世界的に「生態系や生物多様性を守る」と宣言しているコトです。
現在の世界では、生物多様性の危機はどうしても免れ得ないものですが、
世界遺産になったといって浮かれるだけではなく、
同時に日本全体、国民全員で守る決意もしていきたいと思います。
ボニナイトの枕状溶岩