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■ 研究員ブログ74 ■ 世界遺産委員会2015が始まりました!

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6月28日から、ドイツのボンにて世界遺産委員会が始まりました。

今回の世界遺産委員会は、これまでに経験したことがないほど、
「世界遺産」が危機に直面している時期に開かれる大会です。

IS(イスラム国)など過激派による遺産の破壊や多文化の否定、
軍事活動による遺産の損傷、文化財の不法取引や密漁/密猟、
ネパールの大地震などの自然災害など、
問題が山積しています。

過激派による遺産破壊などは、
「世界遺産」だから狙われているという側面もあり、
「世界遺産に指定」することで保護・保全を行うことの
難しさのひとつを突きつけられているわけです。

世界遺産条約、世界遺産委員会にできることは何があるのでしょうか。

今回の世界遺産委員会では、
初日からISなどの行動に対して批判が相次ぎました。

6月29日には「世界遺産におけるボン宣言」が採択されました。
ここでは、世界規模に広がる遺産の危機に対して、
世界が協力して行動することが宣言されています。

また、正義や自由、平和に対する文化や教育は
人間の尊厳に欠くことができないものであり、
全ての国にとって文化や教育を守ることは義務である、としています。

そしてユネスコがその先頭に立って
積極的に行動すべきであるとも重要であるとも。

このボン宣言を受けて、ISなどが直ちに遺産破壊を止める、
なんてことはまずないでしょう。
そんなに話がわかる相手だったら、ここまで被害は拡大していません。

ならば、ボン宣言なんて無駄なのかといえば、
決してそうではないと思います。

いま、世界が協同すると宣言することが大切なのです。

ユネスコ、各国の行政担当者、文化財や自然の保護に関わる人だけでなく、
教育に関わる人、地域住民など、全ての人々が共に、
世界の多様性を守り、寛容で平和な世界を目指すことが重要です。

今回の世界遺産委員会では、ユネスコで採択された
6つの文化財の保護に関する条約で情報共有などを行い、
より効果的に文化財保護にむけて活動することも話し合われました。

世界遺産条約や世界遺産委員会が即効性のある対策をとることは
難しいかもしれませんが、
意志をもって行動し続けてゆけば、必ず望む方向に進んでゆくと
僕は信じています。

ユネスコや世界遺産条約は、やはり影響力がありますから。

「明治日本の産業革命遺産」の登録の可否だけでなく、
ユネスコや世界遺産条約がどこに何をしてどこに進もうとしているのかも、
ぜひ注目してもらいたいと思います。

もちろん、今週末の「明治日本の産業革命遺産」が僕も気になりますが。