■ 研究員ブログ102 ■ 国立西洋美術館、15日の22時頃に世界遺産登録!?……世界遺産委員会2016
参議院選挙が終わり、日本のこれからがどこに向かってゆくのか、
少しはっきりしてきたと思います。
大きな熱狂と共に終えた英国の国民投票とは別の意味で、
投票率の低かった今回の選挙の有権者の責任について、
僕たちはしっかりと考えないといけないですね。
そして選挙が終わると、イスタンブルで世界遺産委員会が始まりました。
今回は第40回の記念すべき委員会です。
直前に空港でテロがあるなど、
開催が心配されもしたのでほっとしました。
先月の「研究員ブログ98」では、
今回の世界遺産委員会で29件の遺産が新規登録の審議を受けると書きましたが、
その後、不登録勧告であったクロアチアの遺産と、
登録延期勧告であったタイの遺産が推薦を取り下げたため、
今回審議される遺産は27件となりました。
新規登録物件は、15日から文化遺産、複合遺産、自然遺産の順番で
審議される予定になっており、
日本の国立西洋美術館本館が含まれる「ル・コルビュジエの建築作品」は
11番目に審議されるスケジュールです。
順調に行けば、日本時間で15日の21~22時頃には登録されるのではないでしょうか。
今日から審議が行われるのが、危機遺産リストに掲載する遺産です。
危機遺産リストに追加が検討される遺産は7件あります。
1.ジャー動物保護区(カメルーン共和国)
2.タラマンカ山脈地帯:ラ・アミスタ自然保護区群とラ・アミスタ国立公園
(コスタリカ共和国及びパナマ共和国)
3.オモ川下流域(エチオピア連邦民主共和国)
4.ジェンネの旧市街(マリ共和国)
5.カトマンズの谷(ネパール民主共和国)
6.シャフリサブズの歴史地区(ウズベキスタン共和国)
7.ドン・パヤーイェン-カオ・ヤイの森林群(タイ王国)
世界遺産は総数を増やすことよりも、
危機遺産の保護・保全に注力する方向にシフトしてゆく時期だと思います。
これは「世界遺産委員会が」というよりも「世界中の人々の意識が」というコトです。
開会式でもまず、世界遺産が現在これまで以上に多くの危機に直面しており、
テロや紛争に対しても国際レヴェルでの協調が必要であることが確認されました。
イリーナ・ボコバ事務局長は言います。
「どんな文化や信仰をもつ人々も顕著な普遍的価値の下にまとまることが出来る、
世界遺産とは革新的な理念です。世界遺産が攻撃されると、
それが他の地域や時代、文化のものであっても私たちは深く傷つくのです。
世界遺産を破壊から守ることは、人々の価値や権利を再確認することです。
傷ついた記憶を癒し、信頼回復のために遺産を利用し、
未来を見据えてゆくことなのです。」
世界遺産の新規登録は、世界遺産委員会の最重要事項ではありません。
ぜひ世界遺産が直面する問題に思いを馳せるきっかけにしてみてください。
いま私たちがどのような問題を抱えているのか、
きっと見えてくると思います。
……もちろん、新規登録もとても楽しみにしています!