第32回世界遺産委員会ニュース④(新規文化遺産の紹介③)
バヌアツから初の世界遺産が誕生!スイスの山岳鉄道も!
第32回世界遺産委員会では計19件の文化遺産が新規登録されました。これまで、そのうちの12件を紹介しましたが、残る7件を紹介します。観光客にも人気のスイスの山岳鉄道や、カンボジアの物件として登録されることに隣国タイが反対している寺院、またオセアニアの島嶼国バヌアツから初の世界遺産誕生など、どれも注目の物件です。
■アルブラとベルニナの景観とレーティッシュ鉄道 (スイス/イタリア)
スイスアルプスの2つの峠を越える歴史ある鉄道の2路線と、そこに広がる景観が、この遺産を構成しています。1904年に開業したアルブラ線は、登録範囲の北西部を通る、全長67kmの路線です。42のトンネルと覆道、52の高架橋と橋など、印象的な建造物が続きます。全長61kmのベルニナ線は、13のトンネルと覆道、52の高架橋と橋を含みます。
この遺産は、20世紀のアルプス中央部における、鉄道を用いた僻地への交通開発を実証しています。すなわち、山岳地帯における持続可能な社会経済のために大きな影響を与えたのです。また同時に、技術、建築そして環境面での顕著な構造物ともいえます。鉄道が通過する景観と、建築や社会との見事な調和を実現しています。
英 語 名:Rhaetian Railway in the Albula / Bernina Landscapes
仏 語 名:Chemin de fer rhétique dans le paysage de l’Albula et de la Bernina
登録基準:(ⅱ)(ⅳ)
■ハイファと西ガリラヤのバハイ教聖所群 (イスラエル)
この遺産は、バハイ教徒の巡礼、また彼らの強い信仰を象徴するものとして、世界遺産に登録されました。この信仰の創始者たちに関連する、とりわけアッコにあるバハーウッラーの墓、ハイファにあるバーブの霊廟を始めとする、アッコからハイファまでの26の建造物、記念碑や遺跡、11の場所があります。それに加え、家や庭園、墓地もあり、新古典主義様式の近代建築である教団の本部棟は、研究や文書保存の場でもあります。
英 語 名:Baha’i Holy Places in Haifa and Western Galilee
仏 語 名:Les lieux saints bahá’is à Haifa et en Galilée occidentale
登録基準:(ⅲ)(ⅵ)
■カマグエイの歴史地区 (キューバ)
カマグエイはキューバを植民地化したスペインが最初に建設した7つの村のうちの一つです。牧畜と砂糖工業に特化した地域における中心都市としての役割を果たしました。1528年に入植が始まり、広場や道路、曲がりくねった小道、家屋など、ラテンアメリカの植民地都市では他に見られない都市基盤のもと発展していきました。歴史地区の面積は54ヘクタール、主要道路から比較的離れた場所に建設された伝統的な植民都市の顕著な典型です。
スペイン人入植者たちはヨーロッパ中世都市の影響を受けていて、外観はもちろん、石工や建築家たちがもたらした伝統的技術もヨーロッパ本土のものです。ここには新古典主義、折衷主義、アール・デコ、ネオ・コロニアル、そしてわずかながらアール・ヌーヴォーと合理主義などと、様々な様式が反映されています。
英 語 名:Historic Centre of Camagüey
仏 語 名:Le Centre historique de Camagüey
登録基準:(ⅳ)(ⅴ)
■サン・ミゲルの保護都市とアトトニルコのナザレ・キリストの聖地 (メキシコ)
王立の内陸道路を守るために16世紀に造られた城壁都市、サン・ミゲルは、多くの宗教的な、また市民のための建造物がメキシコ・バロック様式で造られた18世紀に栄華を極めました。それらのうちのいくつかは、バロックから新古典主義へと移行する時期の様式を代表する傑作です。
この町から14km離れたところには、同じ18世紀にさかのぼるイエズス会の聖地があります。ここはメキシコが「新スペイン副王領」と呼ばれた時代のバロック美術・芸術を代表する、最も美しいもののひとつに挙げられますです。大きな教会や小さい礼拝堂があり、どれも油彩画や壁画で装飾されています。ヨーロッパとラテンアメリカの文化的交流を示す顕著な例といえます。建築物の外観や内部装飾は、イグナチウス・デ・ロヨラの教義を反映しています。
英 語 名:Protective town of San Miguel and the Sanctuary of Jesus de Nazareno de Atotonilco
仏 語 名:Ville protégée de San Miguel et le sanctuaire de Jésus de Nazareth d’Atotonilco
登録基準:(ⅱ)(ⅳ)
■プレア・ビヒア寺院 (カンボジア)
プレア・ビヒア寺院は、カンボジア全体を見下ろす台地の端にあり、シヴァ神に捧げられたものです。
6世紀に、小道と階段による800mもの道によって、各建築物は機能的にひとつの聖地としてまとまりました。しかしながらその複雑な歴史は、4世紀まで遡ります。この遺産は良く保存されていますが、それはカンボジア中央から離れた、タイに近い場所に位置するということが特に関係しています。
この遺産の建築の質の高さは顕著で、自然環境と寺院の宗教的機能が適合されています。丸く磨かれた石の装飾も見事です。
英 語 名:Preah Vihear Temple
仏 語 名:Temple de Preah Vihear
登録基準:(ⅰ)
■ミジケンダ諸族のカヤ聖域森林 (ケニア)
海岸に沿って200km近くも延びる11の森林地区を含む遺産です。ミジケンダ族のカヤと呼ばれる要塞村の遺跡を数多く含んでいます。カヤは16世紀から造られ、1940年代に捨てられました。今日ではこれらは彼らの先祖の住居であったと考えられています。聖域としてあがめられ、長老たちの助言で維持されてきました。遺産としては文化的伝統の証言者であり、また現在に繋がる伝統に直接結びついている点が評価されました。
英 語 名:The Mijikenda Kaya Forests
仏 語 名:Les forêts sacrées de Kaya des Mijikenda
登録基準:(ⅲ)(ⅳ)(ⅴ)
■首長ロイ・マタの旧所領 (バヌアツ)
ここはバヌアツ初の世界遺産として、今回登録されました。エファテ、レレパ、アルトクの島々を遺産範囲に含んでいて、今日のバヌアツ中央部で、1600年頃にロイ・マタと呼ばれた首長の称号を最後に所有した人物の生と死に結びつくものです。遺産にはロイ・マタの住居、彼の死の場所と集団埋葬地があります。ここは口承の伝統と考古学の結びつきを反映しています。
現在もなおこの地域で見られる住民間の対立に、当時は終止符を打ったロイ・マタによる社会改革の継続が、遺産からわかります。
英 語 名:Chief Roi Mata’s Domain
仏 語 名:Domaine du chef Roi Mata
登録基準:(ⅲ)(ⅴ)(ⅵ)
※この文章は、UNESCOホームページに掲載されているニュースをもとに執筆・編集しています。https://whc.unesco.org/en/news/(英語) https://whc.unesco.org/fr/actualites/(仏語)
※遺産名はまだ正式決定のものではなく、その日本語訳も世界遺産アカデミーが独自に付けたものであり、今後変更の場合があります。
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