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第33回世界遺産委員会ニュース⑤(範囲拡張物件の紹介)

2009年 世界遺産委員会ニュース⑤

範囲拡張3物件のうち、2件は名称も変更

スペインのセビーリャで開催された第33回世界遺産委員会では、既存の3物件(文化遺産2物件、自然遺産1物件)の範囲拡張が決定しました。

● サラン・レ・バン大製塩所からアルケ・スナン王立製塩所までの天日塩生産 (フランス)(文化遺産) (旧名:アルケ・スナン王立製塩所)

フランス東部、ブザンソン近くにあるアルケ・スナン王立製塩所は、クロード・ニコラ・ルドゥー設計によるものです。ルイ16世治世下の1775年から始まった建設は、「啓蒙の世紀」発展にける理想を反映させた工業建築の、最初の大きな実現でした。
ルドゥーは円形に建造物を配置することにより、労働組織の効率化とヒエラルキー化を目指しました。結局は半円形の状態で未完成のままとなりましたが、理想的工業都市実現への試みを体現しています。
一方、中世、もしくはそれ以前から塩水を開発していたサラン・レ・バン製塩所は、塩の販売所、アモン井戸、そして古い住居の3つの建物で構成されています。本格的な製塩所はルドゥーにより建造されたことから、アルケ・スナン製塩所と強く関連して、フランスにおける塩生産の歴史の証言者といえるため、今回サラン・レ・バンまで遺産範囲が拡張されました。

英 語 名:From the Great Saltworks of Salins-les-Bains to the Royal Saltworks of Arc-et-Senans, the production of open-pan salt
仏 語 名:De la grande saline de Salins-les-Bains à la saline royale d’Arc-et-Senans, la production du sel ignigène
登録基準:(i)(ii)(iv)

 
● レヴォチャ、スピシュ城と周辺の文化的建造物 (スロバキア)(文化遺産) (旧名:スピシュ城と周辺の歴史的建造物)

13世紀初頭から14世紀にかけてタタール人の侵入を防ぐために築かれたスピシュ城と、その城下町スピシュカー・カピトゥラは、中世の東ヨーロッパにおける軍事的、政治的、そして宗教的にきわめて重要な拠点でした。また、ロマネスクとゴシックの建築物が驚くほど手付かずのままで残っています。
今回、13世紀から14世紀にかけて造られた、近隣の城壁都市レヴォチャ中心部の歴史地区にまで範囲が拡張しました。保存されている主要遺産としては、15世紀から16世紀にかけて造られた10の祭壇を持つ聖ヤコブ教会が有名です。後期ゴシック様式の色鮮やかな木製祭壇画のコレクションを保有し、そのうちの18.6mの高さがある主祭壇画は、1510年頃にマイスター・パウロにより造られました。

英 語 名:Levoča, Spišský Hrad and the Associated Cultural Monuments
仏 語 名:Levoča, Spišský Hrad et les monuments culturels associés
登録基準:(iv)

 
● トゥバッタハ岩礁国立海洋公園 (フィリピン)(自然遺産)

この自然遺産は、「プエルト・プリンセサ地下河川国立公園」があることでも知られるパラワン島の南東沖、スル海に浮かぶ岩礁とサンゴ礁を含む海洋公園です。南北にノース・リーフとサウス・リーフという2つの環礁を擁し、公園の3分の2をサンゴ礁が占めるため、海洋生物の極めて多様な種が生息しています。マンタやミノカサゴ、クマノミ、ツノダシ、ウツボなど500種近い魚類が生息し、シュモクザメなどサメの種類も豊富です。また北部にある小島は、シロハラグンカンドリなどの鳥類と、タイマイなどの海亀の営巣地としても知られます。これらの多くが絶滅危惧種に指定されています。
今回、登録範囲が332平方キロメートルから968平方キロメートルと、これまでの3倍近くにまで拡張され、貴重な生態系をより手厚く保護することとなりました。名称の変更はありません。

英 語 名:Tubbataha Reefs Natural Park
仏 語 名:Parc naturel du récif de Tubbataha 
登録基準:(vii)(ix)(x)

 
※この文章は、UNESCOホームページに掲載されているニュースをもとに執筆・編集しています。https://whc.unesco.org/en/newproperties/(英語) https://whc.unesco.org/fr/nouveauxbiens/(仏語)

※UNESCOのニュースだけでなく、物件を保有する国や地方自治体など、現地の組織が提供する情報を解説文中に加えているものもあります。

※新規登録物件および範囲拡張物件の遺産名はまだ正式決定のものではなく、その日本語訳も世界遺産アカデミーが独自に付けたものであり、今後変更の場合があります。

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