■ 研究員ブログ⑪ ■ ヤン・フスとゆがんだ真珠
「師走」なんていうと和のイメージですが、
街中はクリスマスムード一色です。
クリスマスと聞いてすぐに思い出すのは、
フランスのストラスブールです。
「サントル・ドゥ・ノエル(クリスマスの中心)」を自称し、
『ストラスブールの旧市街』の中心にあるノートル・ダム大聖堂の前には、
大きな美しいクリスマスツリーと
煌びやかなマルシェ・ドゥ・ノエル(クリスマス市)が現れます。
僕が行ったクリスマス前は寒波がきて恐ろしく寒かったのですが、
様々な香辛料の入ったホット・ワイン(ヴァン・ショー)を飲みながら、
彩り鮮やかなクリスマスオーメントやキャンドル、お菓子などを売る
マルシェ・ドゥ・ノエルを全て観て回りました。
世界遺産にはキリスト教関連の遺産が多いため、
クリスマスの時期には世界各地の教会や聖堂でミサが行われます。
中でも特にサンタ・クロースの起源とされる聖ニコラウスと関係する世界遺産では、
チェコの『プラハの歴史地区』に「聖ミクラーシュ聖堂」があります。
聖ミクラーシュとは聖ニコラウスのチェコでの呼び名で、
毎年12月6日が「聖ミクラーシュの日」です。
プラハにふたつある「聖ミクラーシュ聖堂」のうち、
旧市街に建つ聖ミクラーシュ聖堂は、18世紀にバロック様式で再建されました。
再建当時はベネディクト派の聖堂でしたが、
現在はプロテスタントのフス派の聖堂となっています。
ヤン・フスは宗教改革運動の先駆者とされる思想家で、
1411年にカトリック教会から破門され、コンスタンツ公会議を経て処刑されました。
ヤン・フスの死後、
16世紀のマルティン・ルターやジャン・カルヴァンの運動をきっかけに、
宗教改革が起こります。
一方でカトリック側も改革の必要性を感じ、
反宗教改革(対抗宗教改革)が行われました。
その象徴となったのが「バロック様式」の建築です。
人文主義や哲学と結びついた、どこか頭でっかちなルネサンス様式とは異なり、
情熱に溢れ、融通無碍でより人間的なバロック様式は、
その独特な造形によってカトリック教会の荘厳さを増す役割を担いました。
バロック様式はカトリックの崇高さを保ちながら、
人間的な個性溢れる表情で信者に歩み寄ったとも言えます。
そうしたバロック様式の聖ミクラーシュ聖堂が、
現在ではプロテスタントのフス派の聖堂となっているというのは、
激動の歴史を経てきたチェコの姿をよく表しているようにも感じます。
聖ミクラーシュこと聖ニコラウスは、
日本ではサンタ・クロースと呼ばれ、
「サンタさん」の愛称で親しまれています。
でも、聖ニコラウスはサント・ニコラウスなので、
「サンタさん」って変ですよね……むしろ「クロースさん」なのでは!?
こんなコトを言っているから、
サンタさんは僕のところへは来てくれないのかしらん。
それでは皆さま、
Joyeux Noël et Bonne Année!
ストラスブールのクリスマスツリー
街中もライトアップされます