■ 研究員ブログ36 ■ さようなら、ベネディクト16世
ようやく春らしくなってきましたね。
駅までの道でも梅の花が咲き始めていて、
視覚的にも春を感じます。
この時期は、卒業や別れなど、少し寂しさもありますが、
新しい日々を待ちわびるワクワクとした高揚感もあります。
同じような(?)不安と期待を胸に最近を過ごしているのが、
カトリックの人々ではないでしょうか。
第265代ローマ教皇であったベネディクト16世が2月末で退位し、
今週末頃にでも行われるのではないかとされる「コンクラーヴェ」で
新しいローマ教皇が選出されるからです。
コンクラーヴェは、選挙権を持つ80歳未満の枢機卿が全員そろって
初めて日程が決まります。
該当する117人の枢機卿のうち、まだ10数人がヴァティカンに到着していないようなので、
3月10日前後に行われるであろう、という曖昧な報道になっています。
基本的にローマ教皇は終身で務めるものとされており、
ローマ教皇が生前に退位したのは約600年ぶりだそうです。
600年前といえばあの、ローマとアヴィニョンに教皇が並び立った
教会大分裂(大シスマ)の時代。
その大シスマに終わりを告げた1414年から始まるコンスタンツの公会議で、
ローマ教皇グレゴリウス12世が廃位となったのが、
ヴェネディクト16世の前に生前で退位した事例です。
そのとき共に廃位となったアヴィニョン教皇が、
偶然にも同じ教皇名のベネディクト13世。
それ以来、現在までフランス人の教皇はいません。
ベネディクト16世の時代は、
ヴァティカンのマネーロンダリング問題や、聖職者による児童虐待、
ベネディクト16世の発言など、色々な問題が世界中で話題となりました。
600年前の大シスマの時代から現在まで、
権力闘争を含め様々な「闇」がヴァティカン内部にあるのも事実なのでしょう。
その頂点に立つローマ教皇の心労やプレッシャーは想像を絶するものがあると思います。
ナンニ・モレッティが『ローマ法王の休日』の中で描いた教皇像も、
必ずしも大げさなものではないのかもしれません。
ベネディクト16世は、まだ働けるうちに次の教皇にバトンを託すことで、
これまでのカトリックの伝統に新たな風を入れました。
これを受けた次の教皇が、
どのようにカトリック信者だけでなく、世界中の人々を導いていくのか、
カトリック信者ではない僕も、楽しみにしています。