■ 研究員ブログ72 ■ 第39回世界遺産委員会、明治日本の産業革命遺産は週末に登録か
いよいよ入梅しましたね。
咲きはじめていたアジサイは、雨に濡れたほうがやっぱり綺麗なので、
憂鬱な雨も我慢したいと思います。
さて、ドイツのボンで開催される第39回世界遺産委員会まで、
あと20日あまりとなりました。
6月28日から始まる世界遺産委員会では、
登録範囲の拡大も含めて、38件の遺産の審議が行われます。
それ以外にも、46件の危機遺産や95件の遺産の管理報告、
12件の軽微な変更の遺産、作業指針や世界遺産の運営に関する議題など、
多くのことが10日間の間に話し合われます。
世界遺産リストへの新規記載を目指す34件のうち、
19件に「登録」勧告が出されました。
また、登録範囲の拡大を目指す4件のうち、
3件で拡大(登録基準の追加を含む)が承認されています。
世界遺産の保有数上位の国では、
1位のイタリアから1件(登録勧告)、
2位の中国から1件(登録勧告)、
3位のスペインから2件(1件は範囲拡大承認で、1件は登録延期勧告)、
4位と5位同数のフランスとドイツは、
フランスから2件(1件は登録勧告で、1件は情報照会勧告)、
ドイツからは3件(それぞれ登録勧告、登録延期勧告、不登録勧告)
が審議される予定です。
開催国のドイツからは文化遺産だけで3件出されていますが、
これは、ひとつがトランス・バウンダリー・サイトで、
各国の推薦上限に含まれないもの。
もうひとつが文化的景観で、各国の文化遺産の推薦上限に含まれないもの。
最後が文化遺産として上限枠の中で推薦されたものになります。
登録勧告がでているのは、この最後のものです。
また、ジャマイカとシンガポールから、
初めての世界遺産が誕生する可能性があります。
どちらも「登録」勧告だったので、まず大丈夫だと思います。
「明治日本の産業革命遺産」ですが、問題なく審議されれば、
日本時間で7月4日夕方か夜、もしくは5日の夕方に
「登録」決議となるのではないかと思っています。
審議は危機遺産に始まり、自然遺産、複合遺産、文化遺産と続いていくので、
あまり世界遺産委員会の最初のほうで決まることはないでしょう。
ただ、文化遺産内の審議順はまだ確定ではないので、
どうなるのかはわかりません。
また委員会委員国である韓国の反対もあり、審議自体もまだまだ不透明です。
とある報道では、日本側に賛成する国が3分の2に達していない、
というものがありましたが、
世界遺産委員会の審議は、話し合いの中で合意を見つけて結論を出す、
というのが基本です。
しかし、合意に達せず、投票の動議が出された場合、
すぐに議論は打ち切られてそのまま投票になります。
日本側から投票の動議を出すとは思えないので、
韓国側が勝てると思えば、韓国から動議が出され投票になります。
これはあくまで、世界遺産委員会までの間に、
日本と韓国で合意が得られなかった時の話です。
できれば、世界遺産委員会が始まるまでに、
日韓の話し合いで合意点を見るけることができ、
安心して世界遺産委員会を迎えられることが望ましいのです。
さてさて、どうなるのでしょうか。
もっと世界遺産本来の価値で議論が深まるとよいのですが、
明治日本の産業革命遺産では、それは最初からちょっと難しいのかもしれませんね。