■ 研究員ブログ98 ■ 今年の世界遺産委員会では、いくつ登録される!?……世界遺産委員会2016
オバマ大統領の原爆ドーム訪問も終わり、
次はいよいよ7月の世界遺産委員会ですね。
僕的にはその前に、今月始まるサッカーのヨーロッパ選手権がありますが。
ちなみに、決勝戦の日が世界遺産委員会の開催日でもあります。
……この話はもうよいですね。すみません。
今年の世界遺産委員会は7月10日から20日まで、
トルコのイスタンブルで開催されます。
現在、登録範囲の拡大も含めて
審議を予定している遺産が、29件あります。
2014年の世界遺産委員会では41件が、
2015年の時には38件が審議されたので、
今年は少ないな、という感じがします。
そこでよく見てみると、
推薦書を提出しながら、諮問機関の調査を経て
推薦書を取り下げた遺産が、6件ありました。
「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」もここに含まれます。
諮問機関と事前に意見交換を行うアップストリーム・プロセスの中で、
「確実さ」を目指す方向で慎重になっていることが窺えます。
29件の内訳は、文化遺産が16件、自然遺産が9件、複合遺産が4件です。
このうち、登録勧告が出ているのが13件、情報照会が1件あるので、
今年新たに世界遺産となるのは13~14件でしょうか。
そして、現在世界遺産を最も多くもっているイタリアからの推薦物件はなく、
2番目に多い中国からは2件(文化遺産1件、自然遺産1件)が推薦され、
どちらも登録勧告が出されています。
ということは、今回、中国の2件が登録されると、
イタリア51件、中国50件で、その差は1件!
2017年の世界遺産委員会では中国がトップに躍り出るか!?
と思ったら、イタリアも黙って(?)はいませんでした。
2017年の世界遺産委員会に向けて推薦書を提出した遺産リストを見ると、
なんとそこには、イタリアから4件も推薦されているのです。
文化遺産1件、自然遺産1件、トランスバウンダリー1件、
トランスバウンダリーの登録範囲拡大1件の、合わせて4件!
一方で、中国からは文化遺産と自然遺産それぞれ1件ずつの2件。
来年はまたイタリアが引き離すのでしょうか!?
わくわくしますね……そうでもないですか。
まぁ、保有遺産の数の争いはどうでもよいのですが、
今回の世界遺産委員会では、
独自の宗教や政治体制を伝えるミクロネシアの人工島「ナン・マトール(写真)」や、
トランス・コンチネンタルの「ル・コルビュジエの建築作品」、
マケドニア王が築いた後にローマの植民都市となったギリシャの「フィリッポイの考古遺跡」、
ネアンデルタール人の洞窟彫刻が残る英国の「ジブラルタルのネアンデルタール人の洞窟」など、
面白そうな遺産が沢山あります。
世界遺産委員会では注目していてくださいね。
ちなみに、アメリカ合衆国が推薦していた
「フランク・ロイド・ライトによる現代建築の主要作品」は
登録延期勧告でしたので、今回は登録されなさそうですね。残念。
それではあと1ヶ月楽しみに待ちましょう。
国立西洋美術館本館の登録の瞬間も見逃さないように。