第33回世界遺産委員会ニュース④(新規自然遺産の紹介)
2009年 世界遺産委員会ニュース④
自然遺産2件はどちらもヨーロッパから
スペインのセビーリャで開催された第33回世界遺産委員会で新規登録が決まった13物件(文化遺産11物件、自然遺産2物件)のうち、自然遺産の2件を紹介します。
● ワッデン海 (オランダ/ドイツ)
ヨーロッパ大陸北西部、北海沿岸のフリースラント地方に広がるワッデン海は、オランダのワッデン海保全地域と、ドイツのニーダーザクセン州とシュレスヴィヒ・ホルシュタイン州にあるワッデン海国立公園からなる自然遺産です。
海岸沿いの湿地帯の穏やかな生態系は、とりわけ物理的要素と有機的要素の融合の作用によるものです。そこには潮の水路、砂州、干潟、塩田、三角江、海洋性植物の平原、貝類の生育地、砂丘など、動植物の数多くの生息地の変遷が見られます。今回登録されたのは、ワッデン海全体の66%近くの範囲です。そこではアザラシやイルカといった海洋哺乳類を含む、動植物の数多くの種が守られています。ここはまた、1年に1200万羽以上もの鳥類が越冬し、繁殖する地でもあります。29種の鳥類にとっては、ワッデン海は渡りの10%以上を受け入れる地です。1987年にラムサール条約に登録されており、オランダ、ドイツ両政府の協力のもと、豊かな自然環境と生態系が守られています。
ワッデン海は自然のプロセスがほとんど乱されることなく続けられてきた、潮の干満による大規模な生態系の、最後のひとつといえます。
英 語 名:The Wadden Sea
仏 語 名:La mer des Wadden
登録基準:(viii)(ix)(x)
● ドロミテ山塊 (イタリア)
世界最多44物件の世界遺産数を誇るイタリアで、ようやく2つ目の自然遺産となったドロミテ山塊は、イタリア・アルプス山脈の北部を含む山岳群で、18の峰を持ち、3,000メートルを超す高さと141,903ヘクタールの広さを誇ります。垂直の岩壁や切り立った断崖、密集する狭くて深く長い谷など、どの風景を切り取っても山の美しさが際立ちます。
9つの連続する遺産地域は、高峰や岩壁だけでなく、氷河地形やカルスト地形を含んでおり、地形学上国際的に重要な、特筆すべき地形の多様性を示しています。それらは頻繁する地滑りや洪水、雪崩などによるダイナミックな自然の動きによって形成されてきたものです。
一方で化石も残されており、中生代の炭酸塩プラットフォームシステムを保存した最良の例のひとつとしての特徴も備えています。
英 語 名:The Dolomites
仏 語 名:Les Dolomites
登録基準:(vii)(viii)
※この文章は、UNESCOホームページに掲載されているニュースをもとに執筆・編集しています。https://whc.unesco.org/en/newproperties/(英語) https://whc.unesco.org/fr/nouveauxbiens/(仏語)
※UNESCOのニュースだけでなく、物件を保有する国や地方自治体など、現地の組織が提供する情報を解説文中に加えているものもあります。
※新規登録物件および範囲拡張物件の遺産名はまだ正式決定のものではなく、その日本語訳も世界遺産アカデミーが独自に付けたものであり、今後変更の場合があります。
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