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■ 研究員ブログ⑱ ■ 世界遺産にできること

日本の風土が、僕はとても好きです。

その風土を作り上げる美しい海も大地も、
あの怒りにまかせて暴れまわったような津波も地震も、
どちらも同じ自然なのだということが、
今は不思議な気がします。

同時に、自然に対する「畏れ」のような思いも深くします。

今回の震災を前にして、
「世界遺産」という視点の無力さや無意味さを感じてしまいます。
「世界遺産を守り引き継ぐ」よりも、
人々の生活の方が比べ物にならないほど大切だと。

確かにそのとおりだと思います。
世界遺産登録を目指す平泉の構成物件にほとんど被害がなかった、という情報などは、
ほっとはしますが、些細なことに過ぎません。

しかし「世界遺産」に出来ることは必ずあるはずです。

例えば、自然の力は強大ですが、
人間には、その困難を乗り越えて文明を築き上げてきた強い力があります。
世界遺産はそれを証明しています。

また、戦争や紛争で壊滅的被害を受けたワルシャワやモスタルの街、
貴重な文書や建物が被害を受けたフィレンツェの大洪水など、
絶望的な状況から人々は確実に復興しています。
世界遺産はそうした復興のシンボルとなります。

世界遺産の個別の物件は不動産ですが、
その根底にある「世界遺産」というのは概念です。
今すぐでなくても、復興の過程でほんの僅かでも
人々の心に力や勇気を与えるもの。
ユネスコの理念を含め、「世界遺産」はそういう存在なのだと思っています。

必ず今回も復興し、被災した方々が
再び故郷の自然を美しいと思える日が来ると信じています。

避難所生活を送る人々も、
救援活動をする人々も、
支援活動をする人々も、
そのひとつひとつの行動全てが
すでに復興へとつながっているのです。

亡くなられた方には心より哀悼の意を表したいと思います。
少しでも多くの行方不明者の生存確認がとれますように。

被災した方々の、心の潤滑油がなくならないうちに、
次への希望が見えることを願っています。