■ 研究員ブログ24 ■ BIENVENU! 世界遺産委員会!
夏至です。
とうとう夏になってしまった、
というワケです。
僕の実家の名古屋の隣り、三河地方では
夏至の日に無花果の田楽を食べる(らしい)ので、
今日のお昼は日本橋でイチジクのパンを買ってきました。
三河出身でも田楽でもないですが、美味しければよいのです。
さて、6月19日(日)からいよいよ第35回世界遺産委員会が
パリのユネスコ本部で始まりました。
当初バーレーン王国での開催予定でしたが、
昨今の政情不安のために、ユネスコ本部に変更になりました。
今回の世界遺産委員会では、
169件の物件の遺産価値について審議が行われます。
その中には初めて世界遺産を持つ可能性のある、
コンゴ共和国、パラオ、バルバドス、ジャマイカ、
ミクロネシア連邦、アラブ首長国連邦の6カ国の遺産や、
34件の危機遺産も含まれています。
21日の段階でインドの「マナス野生動物保護区」が
危機遺産リストから脱することが決定しています。
1992年に危機遺産リスト入りしてから19年。
長かったですね。
この危機遺産リストというのは、
ある意味、世界遺産リストよりも注目すべきものだと思います。
遺産価値どころか、もしかすると存在自体も危うい世界遺産、
……それが危機遺産だからです。
今回、新しく世界遺産をもつ可能性のある「コンゴ共和国」は
旧フランス領だった地域です。
旧ベルギー領だったザイールこと「コンゴ民主共和国」は、
世界遺産を既に5件持っていますが、
その全てが今のところ危機遺産リストに登録されています。
先日「ようこそ、世界遺産! 小笠原諸島編」でも書きましたが、
世界遺産リストに記載される、ということは
決して楽なことではありません。
世界遺産リストに記載されると同時に、
世界的な注目の下に、その遺産価値を守っていかなければならないのです。
それは想像以上に大変なことです。
例えば小笠原諸島の生物多様性を守るためには、
ペットとして猫や犬を飼うことや、
快適な暮らしをするために送電線をひくことだって
断念しないといけないかもしれません。
実際、小笠原諸島でもペットとして連れ込んだ外来種が
固有生物を駆逐してしまった事例が報告されています。
また観光開発や都市開発によって
遺産価値が損なわれるだけではなく
これまでの人々の日常生活までが乱される可能性も多々あります。
「世界遺産になる」ことは、
犠牲を払ってでも、この遺産や文化・自然を守りたい、
という住民全体の決意と合意がなければ
地域住民にとって負担の大きなものとなります。
その負担が高じれば危機遺産リスト入りしたり、
『ドレスデン・エルベ渓谷』のように
世界遺産リストから削除、というコトになるのです。
6月20日に行われた第35回世界遺産委員会開会式では、
バーレーンのビン・ハリファ第35回世界遺産委員会議長や、
ユネスコのイリーナ・ボコバ事務局長が挨拶をし、
日本の震災についても触れながら、
遺産を守ることの困難さについて述べました。
そして世界遺産の重要性についても。
恐らく23日から25日にかけて、
日本に吉報が届けられると思いますが、
世界遺産リスト入りしたことを喜ぶだけでなく、
遺産や自然を守る、というコトを
考えるきっかけにしていただきたいと思います。