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■ 研究員ブログ146 ■ 今年の世界遺産委員会では、世界遺産リストから削除される遺産がある!?

サッカーのFIFAワールドカップが始まって眠れない日々が続いていますが、
今週末の24日には世界遺産委員会が始まります。
今年は大忙しです。

先週末には、今年の世界遺産委員会において
新規登録の審議がなされる遺産が発表されました。

結局、諮問機関からの不登録勧告を受けて推薦書を取り下げたのは
日本の「奄美大島、徳之島、沖縄島北部および西表島」だけで、
他の遺産はそのまま世界遺産委員会で審議されることになります。

審議される遺産の総数は30件。
そこには、審議延期の遺産
(「第一次世界大戦(西部戦線)における葬送と記念碑」)が
含まれているので、実質29件です。

文化遺産は22件、自然遺産は5件、複合遺産は3件です。
自然遺産のうち1件は、
2001年に登録されたロシアの『シホテ・アリニ山脈中央部』を拡大し、
遺産名を「ビキン川渓谷」に変更するものです。

また54の危機遺産を含む、157件の遺産の保全状況報告があります。
今回はケニアの『トゥルカナ湖国立公園群』と
ネパールの『カトマンズの谷』、パキスタンの『ラホール城とシャーラマール庭園』の3件が
新たに危機遺産リスト入りに向けた審議となります。
『ラホール城とシャーラマール庭園』は、2012年に危機遺産を脱したのですが
再度、危機遺産リスト入りしそうです。
また『カトマンズの谷』も2007年に危機遺産リストを脱していましたが、
今回はその都市開発などの理由に加え、震災の影響もあって危機遺産リストに入りそうです。
『トゥルカナ湖国立公園群』は初の危機遺産リスト入りになりそうですが、
隣国エチオピアでのダム建設や石油開発、ケニヤ北部での観光開発などが懸念されています。

一方で、ベリーズの『ベリーズ・バリア・リーフ自然保護区』は
保全状況が改善されたため、危機遺産リストから脱する見込みです。

今回、世界遺産センターからの発表を見て驚いたのが、
ウズベキスタンの『シャフリサブズの歴史地区』が
世界遺産リストから削除されるかもしれない、ということです。

『シャフリサブズの歴史地区』は、
世界遺産委員会への報告無しに大規模都市開発などを行ったとして、
2016年から危機遺産リストに記載されており、
保全管理計画が欠如しているということも問題視されていました。
今回、すでに都市開発などで資産が壊されてしまっており、
「顕著な普遍的価値」が損なわれている可能性があるため、
資産の範囲を変更して世界遺産としての価値を再考するのか、
世界遺産リストからの削除も視野に審議が行われるようです。

世界遺産リストから削除されることになると、
オマーンの「アラビアオリックスの保護地区」、
ドイツの「ドレスデン・エルベ渓谷」に続き、
3件目の削除ということになります。

この世界遺産範囲内での都市開発というのは、
日本の世界遺産も他人事ではない、重い問題です。
世界遺産に登録したものをどのように守っていくのか。
開発の邪魔になるから世界遺産なんて返上してもいい、
という判断を保有国などがするようになると、
世界遺産の理念が根底から揺らぐことになります。

オーストリアの『ウィーンの歴史地区』も
同じような問題に直面していますし、
注目すべき議論ですね。

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