■ 研究員ブログ82 ■ パリに祈りを、そして 世界に考えを
パリの同時多発テロ事件。
夕方になって初めて知り、用事を済ませた後、
夜になってようやく詳細を知りました。
怒りよりも悲しみよりも、脱力感というか吐き気すら覚えました。
パリやフランスには少なくない数の友人や知人がいて、
彼らの顔が頭に浮かびました。
ISのやったこと、やっていることは許しがたい。
しかし、これはISを憎み討伐すれば解決するようなものではなく、
根はものすごく深いと思います。
なぜなら、被害を受けたフランスに同情し協同すればするほど、
テロの背景や理由から遠ざかってしまうからです。
何度もブログで書いていますが、僕らの視点の多くは欧米のものです。
彼らは、どこでもよくて、誰でもいいから、
適当にパリでテロをしたのではありません。
彼らなりの理由や原因があります。
……だからといって許されることではもちろんありません。
今回のパリの同時多発テロの後、
東京タワーを始めとする世界中のランドマークが
フランスのトリコロールカラーに彩られました。
パリに祈りを捧げるのは良いと思いますが、
シリアやパレスチナ、イラク、トルコ、レバノン、アフガニスタンなどで
多くの市民が命を落とした時に、
世界中のランドマークは、彼らの国旗の色になったでしょうか?
僕たちは、パリやニューヨークの時と同じように、
殺人者に強い怒りを覚えたでしょうか?
ISやテロの撲滅が困難な背景には、
こうした欧米中心の価値観が世界を覆うことに対する
強い反発があるのだと思います。
有志連合が行うIS掃討作戦が、
ISの戦闘員だけを殺害していると信じている、
いや、むしろ誰を殺しているのかさえ関心がない
多くの世界中の人々がテロを生んでいる一因なのでしょう。
むろん、僕もその中のひとりな訳です。
世界の事象に等しく関心をもち関与することは、
もちろん現実的には無理なことです。
それでも、ISに対して、気持ちが悪くなるほどの怒りを覚えるのなら、
暴力が人々を恐怖させる今の世界を少しでも変えたいと思うのなら、
欧米以外の世界を想像してみる、彼らのことを考えてみる、
というのが第一歩だと思います。
テロに対して同じく暴力で報復するというのは
決して解決に向かわないことを
ここ10数年で僕たちは学んだはずです。
世界遺産条約はこうしたテロなどに対してなんて無力なんだと
かつては思っていましたが、
今は、世界中の文化や自然の多様性を等しく尊重する世界遺産条約こそ
大きな力になると思っています、結構本気で。
今はパリに祈りを。
そして明日からは世界について考ましょう。
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