■ 研究員ブログ121 ■ 世界遺産委員会2017、危機遺産の審議にも注目!
明後日からポーランド共和国のクラクフで、
2017年の第41回世界遺産委員会が始まります。
ポーランドと日本の時差は現在7時間なので、
委員会が始まる14時は、
日本時間だと7月2日(日)の21時になります。
2日目からは朝9時半に会議が始まるので、
日本時間だと16時半からです。
新しく登録される遺産の審議は7日(金)~9日(日)に行われるので、
19番目の「『神宿る島』宗像・沖ノ島と関連遺産群」が審議されるのは、
日本時間だと8日夕方から9日にかけてといったところでしょうか。
世界遺産委員会は11日間開催されますが、
その間に新しく登録される遺産が審議されるのは3日間だけで、
それ以外は、危機遺産リストに記載されている遺産の保全報告、
新たに危機遺産リストに記載予定の遺産の審議、
財政状況の報告、予算の審議、作業指針の改訂に関する審議など、
世界遺産に関するさまざまなことが話し合われます。
中でも、新しく登録される遺産の審議に先立って行われる
危機遺産関連の保全報告や審議は、
世界遺産活動の中でも重要な位置づけのものです。
現在55件の遺産が危機遺産リストに記載されています。
全ての保全状況の報告を見れたわけではないですが、
現在記載されている危機遺産は、
引き続き危機遺産リストに記載されそうです。
また、今回の世界遺産委員会で新たに5件の遺産が
危機遺産リストへの記載の可否について審議されます。
001.『ウィーンの歴史地区』(オーストリア共和国)
002.『ラホール城とシャーラマール庭園』(パキスタン・イスラム共和国)
003.『カトマンズの谷』(ネパール連邦民主共和国)
004.『カリフォルニア湾の島々と自然保護区群』(メキシコ合衆国)
005.『セラード自然保護地域群:ヴェアデイロス平原国立公園とエマス国立公園』
(ブラジル連邦共和国)
都市開発や空港建設、法体制の不備、地震の被害、密漁など
危機遺産リスト入りが検討される理由はさまざまです。
5件とも危機遺産リストへの記載が勧告されていますので、
5件とも登録されれれば、危機遺産リストに記載される遺産数は60件となります。
危機遺産リストに掲載される遺産数は、
1979年に『コトルの文化歴史地域と自然』が登録されて以来増え続け、
今年の世界遺産委員会で60件になったとすると
1992に掲載数が二桁の大台に乗ってから25年で4倍にもなったことになります。
世界遺産活動にとって重要なのは、
世界中の文化や自然、歴史などを代表する遺産を、
次の世代に確実に受け継いでゆくことです。
そのためには、危機に直面する世界遺産から危機を取り除く、
ということが最優先課題となります。
世界遺産委員会は、新しい遺産の登録や各国の遺産数などが注目されますが、
それよりも、世界各地の遺産がどのような問題を抱えていて、
それを解決するためには何をすべきなのかということを
考える機会になるとよいなと思います。
それが、世界遺産になっていない自分たちの身近な文化財や自然を守る
という意識の向上に繋がっていけたら、
世界中の国々が協力して世界遺産活動を行う意義があるというものです。
危機遺産リスト関連の審議は、
現地時間で7月4日から6日まで行われます。
ぜひ、この期間も世界遺産委員会の審議に注目してみてください。
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