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■ 研究員ブログ119 ■ 宗像・沖ノ島の世界遺産登録は7月8日頃!?

いよいよ7月2日からポーランドのクラクフで
世界遺産委員会が始まります。
あともう半月なんですね。

世界遺産委員会のHPにも少しずつ情報が増えてきて、
見ているだけで気持ちが盛り上がってきます。
……見ているのは、ほとんどタイトルだけなんですが。すみません。

諮問機関(ICOMOSとIUCN)の勧告を経て、
今年の世界遺産委員会では35件が審議される予定です。
この中には、「新規登録」が29件、
既に登録されている世界遺産の「範囲拡大」が6件あります。

「新規登録」29件には、
文化遺産が23件、自然遺産が5件、複合遺産が1件あります。

その中で、「登録」勧告が出ているのが、文化遺産で10件、自然遺産で2件、
「情報照会」勧告が、文化遺産で1件、
「登録延期」勧告が、文化遺産で7件、複合遺産で1件、
「不登録」勧告が、文化遺産で4件、自然遺産で2件、
2015年の世界遺産委員会で「情報照会」決議となってた遺産の登録勧告が1件、
「不明」が1件です。
(「不明」はパレスチナの緊急登録推薦の遺産ですが、
参照資料がHPで見つけられませんでした。)

日本の「『神宿る島』宗像・沖ノ島と関連遺産群」も
もちろん「登録」勧告の数の中に含まれています。
審議の順番は今のところ19番目とのことですので、
7月8日頃になるでしょうか。

「不登録」勧告が出ている遺産が6件もあるんですね。
「登録延期」勧告も含めると14件もあるので、多いなあという印象です。
諮問機関の審査が厳しくなっているのも関係していると思います。

範囲拡大の遺産は、
ニジェールの『W国立公園』を
ベナンとブルキナファソまで拡大するもの、
ウクライナ、スロバキア、ドイツの
『カルパティア山脈のブナ原生林とドイツの古代ブナ林』に
アルバニアやイタリアなど10ヵ国を追加拡大するもの、
ジョージアの『バグラティ大聖堂とゲラティ修道院』から
「バグラティ大聖堂」を外し範囲縮小するもの、
フランスの『ストラスブールの旧市街:グラン・ディル』を
グラン・ディルからヌースタットまで拡大するもの、
ドイツの『ヴァイマールとデッサウのバウハウス関連遺産』に
ベルナウの資産を追加拡大するもの、
同じく『アイスレーベンとヴィッテンベルクのルター記念建造物群』を拡大するものです。

この中で、範囲変更が認められる勧告が出ているのは4件で、
『バグラティ大聖堂とゲラティ修道院』『ストラスブールの旧市街:グラン・ディル』、
『ヴァイマールとデッサウのバウハウス関連遺産』『W国立公園』です。

ちなみに「軽微な変更」が求められている遺産は13件あり、
変更が認められる勧告が出ているのは、そのうち7件です。

他には、2016年の世界遺産基金の拠出状況の報告もありました。

2016年末までに支払われた昨年の世界遺産基金の拠出金総額は、
2,602,0008ドルで、日本円にすると約29億円。
これは東京大学の年間支出予算の約1.2%です。
東京大学は日本では予算規模が大きいとはいえ、
ひとつの大学の年間予算のたった1%ほどで、
世界中の1,052件ある世界遺産の保護・保全やモニタリング、
登録を目指す遺産の登録準備などをしているのですから、
資金は充分とはいえません。

日本の拠出金額は加盟国中トップの316,019ドルで、
世界遺産活動に大きく貢献しています。
2番目は中国の258,588ドル、
拠出された中で最も少ない金額は33ドルです。
33ドルは日本円で約3,700円!

ユネスコの世界遺産活動は、登録数を抑えつつ、
保護・保全、モニタリングなどに重点を置きつつあります。
この背景には、こうした資金状況があります。
アメリカ合衆国からの分担金拠出はしばらく難しそうですし、
仮にアメリカ合衆国が分担金を拠出したとしても、
劇的に資金状況が改善されるわけではありませんので、
世界遺産活動にとって何が重要なのか、プライオリティはどこにあるのか、
しっかり考えていく必要があると思います。

これは世界遺産委員会だけでなく、
世界遺産をもつ各国や各自治体、地元の人々もよく考えるべきことです。
世界遺産活動の理念は素晴らしいものだと僕は思っていますので、
世界遺産登録の先にある「世界遺産活動の理念」が、
しっかりと浸透することを願っています。

他人事のような言い方になってしまいましたが、
世界遺産委員会を前に、思いを再確認したところでした。

■ 追記2017.07.02
ドイツの『アイスレーベンとヴィッテンベルクのルター記念建造物群』の登録範囲拡大の申請が
取り下げられましたので、審議件数は34になっています。
「『神宿る島』宗像・沖ノ島と関連遺産群」の審議順に変更はありません。

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