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■ 研究員ブログ105 ■ 長崎の原爆の日に思うこと……長崎の教会群とキリスト教関連遺産

2016.08.09

今日は長崎の原爆の日ですね。
長崎に原爆が落とされてから71年が経ちました。
世界はあの日の悲劇から学んで、平和な世界に向かって歩んでいるのでしょうか。

メディアで報道されるさまざまなニュースを見ていると、
世界は不寛容さを増しているように感じます。
意見の違うものを排除し、自分に都合のよいことを押し通す。
これはIS(イスラム国)や彼らに影響を受けた人々によるテロだけではありません。
世界や日本の政治でも、僕らの日常生活の中でも感じます。

僕が、「今の自分の世代」で社会を生きるのが初めてのために、
社会の不寛容さを感じているだけで、
昔からこんな感じだったよ、と言われるかもしれません。
もちろん、昔に比べて現代の方が、犯罪が多く凶悪化してて、モラルがない、
なんてことはないと思います。
昔の方がよかったなんていうのは、根拠のないノスタルジーです。

ただ、世界全体がイライラしているというか、
ざわざわとした落ち着きのなさを感じるのです。

先月の7月25日、文化審議会が開かれ
2018年の世界遺産登録に向けて日本から推薦する遺産に、
「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」が選ばれました。

「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」は、
イコモス(ICOMOS)からの指摘を受けて、今年2月に推薦書を取り下げましたが、
その後、イコモスの協力を得ながら推薦書の書き直しを行い、
今回の推薦決定につながりました。

イコモスからの指摘は、大まかに言うと
「禁教・潜伏」に焦点をしぼるべき、というものでした。

はじめ、このニュースを聞いたとき、
イコモスからの指摘は、長崎が世界遺産にしたい価値とは違うのではないか、
地元の意向と異なる遺産価値で世界遺産に登録する必要はあるのか、
などと思ったのですが、今は「禁教・潜伏」に絞るというのは、
世界にアピールする上でよいのではないかと考えています。

「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」が歩んだ苦難の背景には、
文化的な多様性の否定や他者に対する不寛容、
カトリックとプロテスタントの宗教上の対立と、
経済を優先する政治的な思惑などなど、
現在、世界が抱えている問題とリンクしている点が多いのです。

1,000件を超える世界遺産が世界中にある中で、
苦難の歴史を伝える「平和の遺産」であり、
現代社会に対しても示唆に富んでいるとアピールすることは、
世界遺産としてのアイデンティティを示す上でとてもよいことです。

世界遺産をなぜ守っていくのかというと、
私たちが歩んできた歴史のよい面も悪い面もすべて記憶して、
後世のために活かすということだと思います。

今日の長崎の「平和宣言」にあった言葉。
「核兵器保有国をはじめとする各国のリーダーの皆さん、そして世界中の皆さん。
長崎や広島に来てください。原子雲の下で人間に何が起きたのかを知ってください。
事実を知ること、それこそが核兵器のない未来を考えるスタートラインです。」

「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」は原爆関連の遺産ではありませんが、
『広島平和記念碑(原爆ドーム)』と別の側面から、
過去を記録するだけでなく将来につなげる遺産として、
平和な世界の実現の力になると信じています。

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